さて、株主総会の様子を少し振り返っておこう。

 昨年の株主総会では、内田体制を支えてきたアシュワニ・グプタ元COO(最高執行責任者)と経済産業省出身の豊田正和元社外取締役が突然退任した経緯があり、「また経営陣の混乱か」と株主から追及された。たが、応答した内田社長の“塩対応”が目立ち、株主からは「内田さん、あなた評判悪いよ」という厳しい声も飛び出る始末だった。

 これに対し、今回の株主総会は、むしろ内田社長を励ますような質問が多かったのだ。日産の業績が回復していることで、株主の留飲も下がりつつあるのだろう。

 ただし、一方で強く指摘されたのが「株価の低迷」と、その対応を求めるものだった。

「日産のPBR(株価純資産倍率)は直近で0.33倍と低すぎる」「内田社長就任後の20年6月の日産の株価は高値で約490円、これが24年6月で539円と約50円アップしただけ。内田社長がこの4年でやったことはなんだったのか」と問う声が上がった。これに対し、内田社長は「社長就任時には毀損(きそん)した日産ブランドの立て直しと収益をマイナスからプラスにすることに注力してきた。これからは台数を上げて、適正レベルの株価を具現化させることへ覚悟を持って進めたい」と答えた。

 また、日産がルノーとの新たな資本関係に移行する中で、先のホンダとの提携検討についても質問が出た。内田社長からは「ルノーとのアライアンスは過去の延長線でない新たなステップへ、ホンダとの話も同様に進めている」と前向きなものにとどめて言及した。

 内田社長の後継について、先述した通り若い人の抜てきや登用をすべきとの声も上がった。内田社長は、「日産は多様性を重視しており、日産らしい価値につながるよう、頑張っていく」と答えた。

 日産は創業90周年を迎えて、これからは100年という大きな節目に向かって動いていくことになる。内田体制の総仕上げと同時に新たな日産の方向づくりのために、今期から正念場を迎えることになる。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆  佃 義夫)