「自己流です。あるときうちの師匠(吉朝)が釣りにハマり、急に鯛を持ってきて、さばくことになってしもたんですよ。しどろもどろになりながらもやりました。そうしたら『落語の稽古にもなるがな』って」

 えっ、鯛をさばくのが?

「鯛が出てきて料理するような噺がいくつかあるんです。あ、大根のかつらむきも覚えましたねえ。米朝師匠がお刺身お好きなので。“つま”から作るんですわ。直弟子に元板前の人がいて、教えてくれました」

 落語家修業、並大抵ではない。それはさておき、吉坊さんのきょうの鍋の具は、豆腐に白菜、鶏肉とシンプル。昆布出汁で煮て、ぽん酢でいただく。

鍋同書より転載

「米朝師匠がお好きだった、豆腐と白菜だけの湯豆腐です。まず豆腐だけ昆布出汁で煮て、濃口醤油と花がつおで食べてから、次に白菜を入れます。鍋のときは他におかずなし。だから『きょうは鍋や』と言われると『助かったー』と思いました、ラクですから。鍋のときは師匠、必ず飲んではりました」