「全戸加入が原則」だが
じつは加入は義務ではない

 さて、それでは、これらの地域住民組織に共通する性質を考えてみよう。町内会の定義ということになる。

 町内会・自治会は、「共同防衛」を目的とする「全戸加入原則」をもった地域住民組織である。

 この目的ゆえに町内会は、可能なかぎり一定区域に住むすべての世帯や事業所に入ってもらいたいと考え、それを前提とした活動をしているのである。それが「全戸加入原則」の意味である。

 町内会の全戸加入という特質は、これまで否定的に評価されることが多かった。戦時体制の下で実際に全戸加入が強制されたことがあったからである。しかし町内会が民間の団体である限り、全戸加入を強制することなどできない。

 できるのは、無理は承知で、できれば全戸が加入してほしいと思って活動するだけである。それが全戸加入原則、すなわちできれば全戸が加入してほしいと考えて活動するという原則である。

 しかし、これも「実は、町内会ヘの加入は義務ではありません」とか、「加入は自発的意思であり、任意だ」ということで、否定的にみられることが多い。そんな原則があるところが、町内会の変なところだというわけである。

労働組合の原理は
町内会によく似ている

 しかしながら、ここでこれと同じような原則をもつ組織や団体が、他にもあることを指摘しておきたい。

 たとえば、労働組合がそうである。労働組合は労働者の利益を守るために、できればすべての労働者が加入することを目標に活動している。会社単位で全員加入を義務づけるユニオン・ショップや、労働組合員以外は雇わないクローズド・ショップという制度もあるが、基本的に労働組合は任意加入=オープン・ショップである。決して労働者のすべてが組織できているわけではないが、労働者全体の利益のために活動するのが労働組合である。