鈴木栄太郎はこの2つを基本的な機能としているが、聚落社会の基本的機能という意味では、共同防衛の方がより本質的である。なぜなら生活協力は可能ならば地球上の誰とでも取り結ぶことができるので、実は聚落という地理的近接性にこだわる必要はない。事実、現在われわれは地球の裏側で生産された食物や商品を日常的に消費している。

「共同防衛」という
町内会の基本機能

 これにたいして共同防衛は、たとえば地震があって火災などが発生したとき、その場に居合わせた人は、外国人であろうが何だろうが、私は知りませんというわけにはいかないだろう。また内的な秩序破壊者はどこから出てくるかわからない。それゆえ聚落のすべての人が共同防衛に関わらざるをえない。

 そして、主として技術的な理由から、共同防衛は特定の地域的範域を区切って、その内部の人間がすべて共同で防衛に当たらなければならないのである。すなわち、領域や領土はこの共同防衛の必要から設定されて、その範囲内での全員参加を要請するのである。

 そうすると、この共同防衛は国家や地方自治体、そして町内会に共通する本質的な機能であることが理解されるだろう。ヨーロッパ中世の都市は城壁に囲まれていて、その内部での安全が保障されていた。この時代は都市が共同防衛の単位だったのである。

 絶対君主制の国家は徐々に常備軍を備えるようになっていったが、まだ国全体の安全を保障するには至らず、都市や領邦主権にそれを委ねていた。それが近代国家の成立によって、国家が国土全体の防衛を担えるようになっていく。それにともなって都市の城壁は取り払われていき、都市の範域がどんどん広がっていく都市化が語られるようになる。