その点では、住民がすべて加入しているわけではないのに、地域全体のためにいろいろなことをやる町内会とよく似ている。町内会と労働組合を同列に並べて論じることは、これまでほとんど行われてきていないが、この記事ではここが重要な点なので、指摘しておきたい。

 さらに、同じような団体に国家や地方自治体が存在している。国家や地方自治体も国民や市民全体のためにいろいろな活動をしている。

 ただ、決定的に違うのは、国家や自治体は実際に全員加入を強制し、かつ税金という会費すらも強制的に徴収する強制力=権力を保持していることである。この点は決定的な違いである。

 しかし、実はある意味、活動の原理という点では、町内会や労働組合とよく似ているのである。この点もこの記事を理解するうえで肝要な点なので、よく覚えておいてほしい。

 そして、これらの団体に共通する組織としての目的が、実は「共同防衛」という点にある。

売買や契約など「生活協力」は
地球上の誰とでもできる

「共同防衛」とは、鈴木栄太郎という社会学者が提起した概念である。鈴木は「聚落社会の基本的機能」を明らかにするという目的で、それを「共同防衛」と「生活協力」の2つにあると論じた。

 すなわち、人々が聚落を形成して空間的に近接して生活する基本的な理由はどこにあるかというと、それは共同防衛と生活協力という2つの基本的な機能を満たすためであるというのである。

 生活協力については、当然のこととすぐに理解できるだろう。われわれはさまざまな人や機関と契約や売買などのやりとりをしながら生活している。その際に相手が近くにいるに越したことはない、だから聚落を形成するのだ、というのはわかりやすい話である。

 それでは、共同防衛とは何かといえば、それらの生活協力を円滑に安心して行うことができるように、みんなでもって気をつけて、災害や外敵の侵入、内的な秩序破壊としての犯罪の発生などを防ぐということである。