桐蔭横浜は開き直って
年内入試に全力投球
一般選抜比率が低いことを隠したがる大学は多い。一般選抜受験組に避けられやすくなってしまうし、一般選抜枠を少なくして偏差値の下落を食い止めていると受け止められたりするからだ。
そんな中で冒頭の桐蔭横浜大は、23年度入試で「年内入試で定員の9割確保」、24年度入試で「年内入試で定員の100%を確保」という目標を明確に掲げ、年内入試に全力投球している。23年度の一般選抜比率は13.4%、24年度はさらに下がって5.8%である。
年内入試への大胆な目標を隠しもしない開き直りっぷり。これについて同大学は、「極めて大きな転換期であり、学内教職員の意識改革が必要不可欠であることから、23年度入試より、具体的な数値をもって行動目標を設定した」と説明する。
「教科学力の中だけではなく、課外活動や学校行事などで鍛えた資質能力を伸ばし、真に社会から求められる人材を育成するため、20年度より教育改革に着手した。人生と学びの基盤となる力を、全学を挙げて育成しているところ。大学全入時代において、選択される大学となるために、この力に志向性のある受験生へ広く訴求できる、総合型選抜に重きをおくことした」
同大学の教育と入試戦略の転換は、自らの今後の存在意義を示すものとなっている。
中位・下位大学の存在意義とは?
桐蔭横浜の入学者は定員を上回る
文部科学省の中央教育審議会大学分科会・高等教育の在り方に関する特別部会の資料によると、23年の18歳人口は約110万人で、1966年のピークから半減。さらに2040年には約82万人まで減少すると推測されている。一方で大学進学率は上昇し、23年で57.7%。大学進学者数は約63万人で、1966年から倍増している。18歳人口が減少しても進学率が上昇したため、受験人口を確保できてきた。
大学は813校まで増えており、入学定員は約63万人。進学率ももう頭打ちになり、2040年の大学進学者数は約51万人と推計される。上記の特別部会は8月に報告した中間まとめの中で「これから先の急速な少子化は、中間的な規模の大学が1年間で90校程度、減少していくような規模で進んでいる」と言及しており、ここから先、大学淘汰が本番を迎える。
しかも、学生の奪い合いは国内にとどまらない。
「韓国の大学が日本から学生を引っ張ろうとしている」と拓殖大学入学支援センターの稲富直樹事務部長。「これからは日本と韓国、それ以外の国も含めて互いに引っ張り合いになる」という。
韓国では日本より先に急速な少子化と大学のリストラが進んでおり、留学生集めを強力に推し進めている。そしてこれは韓国に限ったものではなく、世界で留学生の獲得競争が激化している。
海外に比べて日本の研究力が低下しており、学力上位の大学は海外からも優秀な頭脳を集めて巻き返すことが至上命令となっている。では淘汰の中心になるだろう学力中位、下位の大学の存在意義は何なのか。そこに桐蔭横浜大は答えを出したわけだ。
大学進学率が5割を超え、大学はエリートのためだけのものではなく、万人に向けて教育内容の多様化を求められる。入学者の学力が下がるほどに、教育の質も下がることを自ら許容する大学は淘汰されて当たり前。上位大学とは異なる質を追求した上で、それでも生き残れないかもしれないという、過酷な戦いが繰り広げられるのである。
年内入試に振り切った桐蔭横浜大は、今のところ、定員を上回る入学者を確保している。
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