ハウスメーカー、デベロッパー、ゼネコンの三つの顔を持つ大和ハウス工業は売上高5兆円に到達し、「創業者の夢」である売上高10兆円へ折り返し地点を過ぎた。創業者の夢へ猪突猛進する中で、大和ハウスは攻めと守りの財務戦略を繰り出してきた。長期連載『経営の中枢 CFOに聞く!』の本稿では、大和ハウスの香曽我部武代表取締役副社長/CFO(最高財務責任者)を直撃し、財務戦略をはじめ、売上高10兆円に近づく鍵となる米国事業の野望について尋ねた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
有利子負債は2兆3000億円!
「創業者に怒られるかも」
――大和ハウス工業の創業者である石橋信夫氏は「金利は眠っている間も働く」という言葉を残し、従業員に対して金利を意識するよう訴えていました。
私が新入社員の頃、新人研修で石橋さんがおっしゃったことをよく覚えています。眠っている間も金利は働くから、借金は恐ろしいもんだと。
1955年に創業した大和ハウス工業は当時、新興の会社でした。知名度も信用力も乏しく、銀行からの資金調達は非常に苦労されたと伺っています。
大和ハウス工業は事業を拡大して売上高は5兆円に到達しました。そして会社の成長に伴って有利子負債も大きくなりました。有利子負債は今や2兆3000億円に上ります。石橋さんに怒られるなと。
――大和ハウス工業は、2003年に初めてCFO(最高財務責任者)という肩書を設けました。初代CFOは小川哲司氏で、03年度から14年度まで担当しました。15年度から2代目CFOを務める香曽我部さんは就任からすでに9年。大和ハウス工業では、なぜCFOが社長より在任期間が長いのでしょうか。
社長、会長も含めて在任期間の決まりはありません。CFOを長く務める特別な理由は、ないと思いますね。
――大和ハウス工業におけるCFOの役割は。
次ページでは、香曽我部氏が大和ハウス工業におけるCFOの役割を明らかにする。また、大和ハウス工業がROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)、総資産回転率を重要指標としている理由を挙げ、特に総資産回転率を改善させるべく取り組む社内の仕組みを解説する。また、同社が重視する米国事業では、「ミニ大和ハウス」の立ち上げを目指すという。同社の米国攻略の独自戦略とは。