「テーマパーク内インフレ」が進行中
客単価アップ戦略に変えたワケ
東京ディズニーリゾートでは、日本社会の物価上昇率を大きく上回る率でインフレーション(物価が上がること)が起きており、この現象を「テーマパーク内インフレ」と本記事で定義します。さらに詳しく、テーマパーク内インフレの様子を見ていきましょう。もともとフードやドリンクは観光地価格ではありましたが、それでも2000年代までは、ランチが1500~1600円程度、チュロスが250円前後でした。
それが現在、チュロスは450円に、ポップコーンはキャラクターのイラストや飾りが付いた「ポップコーン・バケット」だと3000円前後が主流に。ランチはファストフードか高級店かでかなり違いますが、一例としてハンバーガーとポテトとドリンクのセットでも1500円はします。パスタや肉料理をメーンとしたセットは3000円前後が主流となり、高級店では1万円超のコースもあります。
また、年間パスポート(年パス)を持っていれば、パーク外に一度出て食事し再入園するのも可能でした。しかし、コロナショックのタイミングで、オリエンタルランドは年パスを廃止します。これにより、1万円近い1デーパスポートに加えて、飲食やおみやげ、有料オプションなどで1人当たり2万円近く費やすケースも珍しくなくなりました。
オリエンタルランドの経営はこれまで、二度の大きな危機に見舞われています。一度目は11年の東日本大震災で、1983年の開業以来、初めて1ヵ月ほど休業を余儀なくされました。そして二度目の危機が、コロナショックです。度重なる非常事態宣言の影響で、入園者数は2020年度に756万人、21年度は1205万人に落ち込み、人員リストラや給与・賞与の削減を強いられました。
これが教訓となり、単純に入園者数を上げるというよりも、混雑を回避するために入園者数を抑えつつ客単価を上げる戦略に一大転換しています。テーマパークは装置産業かつ労働集約型産業なので、巨額の投資をして設備を造り、従業員を十分配置する必要があります。「夢の国」を維持するコストのために、チケットをはじめテーマパーク内インフレが続いているのです。