運営企業オリエンタルランドは
過去最高益1700億円の見通し

 このような客単価アップの戦略が奏功しているのでしょう。オリエンタルランドは24年3月期決算で、営業利益が1654億円の過去最高益となりました。さらに、25年3月期(通期)の営業利益を1700億円と予想し、再び最高益を更新する見込みです。

 この10年を振り返ると、コロナショックはありましたが、追い風もありました。スマホが普及したことです。オリエンタルランドは、東京ディズニーリゾートを「スマホのアプリが無ければ何もできないシステム」に変えました。社会情勢を活かした変革です。

 ゲストは同じ場所(アトラクションを待つ列を「Queue Line」キューラインと言います)で長く並んで待たされると、苦痛で顧客満足度が低下するものです。一方、運営側からしても、ゲストをキューラインに拘束するのではなく、買い物や飲食で消費を促進したい。こうした思惑が見事に当たったので、最高益の更新が視野にあるのです。

 利益が増えると分かったため、オリエンタルランドが客単価アップを目指す戦略を変えることは今後、ないでしょう。そしてこの成功モデルを、他のテーマパークや観光施設・集客施設が追随することは間違いありません。東京ディズニーリゾートはこれまでもライバルから良き手本としてベンチマークされてきましたが、その傾向はいっそう強くなりそうです。

楽しみたければ有料オプション
「課金」文化が後押しか

 スマホアプリによる変革は、ゲストにとってのメリットもあります。しっかり予習復習して、お金を用意する努力をして課金すれば、長時間並ぶことなく効率良く楽しめるパークになったことは確かです。1回の体験が高額化したため、「絶対に失敗しないぞ」といった意気込みが重要になりました。

 値上げしても年間2800万人もの集客を見込んでいるのは、課金することで楽しむ文化が浸透していることも背景にあるでしょう。無料の部分ではあまり楽しめず、課金することでスムーズに利用できるサービスが増えています。課金文化に慣れた人が、有料オプション購入を受け入れているのでしょう。

 時代が変われば文化も変わり、東京ディズニーリゾートの楽しみ方も変わるもの。足を運んでいなかった人は、あまりの複雑化と高額化に隔世の感を抱くかもしれません。