2025年の世界経済を左右するのは米国の新トランプ政権の政策だ。減税や新エネルギー政策、関税、不法移民規制といったドナルド・トランプ氏が掲げた政策は米国経済にどんな影響を与えるのか。トランプ政策はどこまで実現し、立ち止まる要素はないのか。日本はどう対処すべきなのか。特集『総予測2025』の本稿では、25年の米国経済の先行きを展望する。(丸紅経済研究所研究主幹 峰尾洋一)
減税、関税、不法移民規制…
トランプ主要4政策の影響は?
2025年の米国経済の命運を握るのはもちろん、誕生まで数週間となった新トランプ政権の政策だ。まず、ドナルド・トランプ氏が選挙戦で掲げた減税、新エネルギー政策、関税、不法移民規制の四つの主要経済政策を概観しよう。
減税の約半額は17年に成立済みの既存減税措置の延長であり、実現しても現状の景気にはニュートラルだ。一方、これ以外の時間外給与や社会保険料の税免除、法人税追加減税などが成立すれば大型景気刺激策となる。
しかし、減税は議会の専決事項で、議会共和党の意見も統一されていない。議会での成立が25年後半にずれ込むことも予想され、同年中の経済効果は大きくならない可能性が高い。
新エネルギー政策は、バイデン政権下で導入されたインフレ抑制法の改廃や執行の停止、環境規制の緩和、化石燃料増産が軸となる。インフレ抑制法に関する動きは、同法の税控除や補助金を基に計画されている案件や関連ビジネスに影響が及ぶ。環境規制緩和や化石燃料増産はインフレ対策としてトランプ政策の柱の一つだが、関連業界がどこまで政策に同調するか分からず、25年の影響は不透明だ。
関税は発動のタイミングが早ければ25年内の影響が考えられる。今回対象とされる規模は、全世界共通で10~20%、中国からの輸入品全額に60%と、品目や対象国を限定していたトランプ政権第1期目の関税に比較して大きい。
実際に発動されても関税部分の全額が国内価格に転嫁されるとは限らないものの、輸入品の価格上昇は不可避だ。これは米国の需要下押しにつながる上、対象国の経済にも影響は波及する。さらに各国からの報復関税が発動されれば、農業やエネルギーなどの米輸出セクターに影響を及ぼす。