保険金の不正請求やカルテル、個人情報の漏洩など数多の不祥事に揺れる損害保険業界。旧態依然としたビジネス慣行の抜本的な見直しが急務となる中、兆円単位の政策株売却を余儀なくされ、売却益の使途にも大きく注目が集まっている。特集『総予測2025』の本稿では、売却益の行方について論考する。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
政策株保有ゼロで兆円単位の売却益
成長領域への投資が急務
2024年は旧ビッグモーター(BM。現ウィーカーズ)による保険金不正請求事案に加え、保険料調整行為事案、いわゆるカルテル問題、さらには250万件超の個人情報漏えいが発覚し、損害保険業界は終始その対応に追われることになった。
24年3月に「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」が始まり、6月7日に報告書案が取りまとめられた。その後、法改正を視野に9月27日から始まった金融審議会(首相の諮問機関)に引き継がれ、12月13日に最終の報告書案が提示された。
長年にわたって蓄積されてきた損保ビジネスの古き商習慣があぶり出されただけに、取り上げられた内容は多岐にわたった。
損保業界を根底から揺るがすことになった数々の不祥事。果ては金融審議会が開催され、損保業界の構造的課題について議論が行われる事態となった。その過程で6兆円を超える政策株の売却を余儀なくされたが、その売却益の行方はどこに振り向けられるのか。