日産の25年3月期の連結業績は、この上半期で実質的に赤字に陥っており、19年12月に内田誠社長が就任してから5年間の“経営通信簿”は結果として“不合格”となっている。その結果、内田社長就任後に実施した生産能力20%削減などに続き、またしても世界生産能力2割削減と9000人の人員削減という大リストラの発表に追い込まれるなど、経営は窮地だ。

 さらに、ダイヤモンド編集部の特報によると、両社が経営統合に向けた協議に入る動きのきっかけとなったのが、台湾EMS企業の鴻海精密工業(ホンハイ)による日産買収の仕掛けのようだ。

 ホンハイには、EV事業の最高戦略責任者(CSO)として、元日産副COOで日産と因縁のある関潤氏が所属する。ホンハイは、関氏が前面に出て水面下で動いており、またアクティビスト(物言う株主)の旧村上ファンドが日産株を巡って活動するなど、日産を取り巻く情勢は複雑化している。

 ここで、改めて日産の業績悪化の経緯を振り返っておきたい。

 そもそも、19年12月に就任した現社長の内田氏は、当時、ゴーン氏や西川廣人前社長らの辞任によるゴタゴタの中で抜てきされた“ダークホース”的な存在だった。

 日産は当時、20年3月期決算で6712億円もの赤字を計上するなど、経営は不振。業績復活は内田社長に課された急務だった。内田社長は就任時、「強い日産にできないときは、すぐクビにしてもらってもいい」と、日産再生への強い覚悟を語ったほどで、20年5月には、構造改革の中期経営計画「Nissan NEXT」を発表する。

 その後、「Nissan NEXT」は、一定の成果を収め、最終年度である24年3月期にグローバル販売344万台、営業利益5687億円(営業利益率4.5%)、当期純利益4266億円を達成した。内田社長も「事業構造改革が進んだ。営業利益率5%以上の目標に対し4.5%にとどまったが、新中計でグローバル販売100万台増加と営業利益率6%以上を目指す」と胸を張った。