死後の手続き お金の準備#1Photo:fatido/gettyimages, porcorex/gettyimages

相続税と贈与税の一体化で、毎年110万円の贈与税の非課税枠を活用する「生前贈与」の節税術が、早ければ2022年にもダメになる。それでも税負担はできる限り軽減したいのが本音だろう。実は、今しか使えない節税術がある。110万円の枠を超えて贈与する「駆け込み贈与」で節税できるのだ。特集『死後の手続き お金の準備』(全16回)の#1では、今だからこそ使える節税術を紹介する。(ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)

最強の節税法「生前贈与」
贈与と相続の一体化で「禁じ手」に

 相続税は財産が多ければ多いほど税率が高くなる。このため相続税対策の基本とされるのが「財産を減らす」ことだ。その目的にかなう最強の節税対策として「生前贈与」は広く利用されてきた。

 贈与税は相続税に比べると税率が高いものの、1人当たり年間110万円までは非課税になる暦年贈与がある。一生に一回まとめて課税される相続税に対し、贈与は毎年自由なタイミングでできることも長所だ。

 子供2人で3億円の資産を持つ人の相続を考えてみよう。対策をしなければ約7000万円もの相続税が課されることになる。

 しかし、仮に子供2人とその配偶者2人、さらに孫6人を含めた計10人に毎年110万円ずつ贈与した場合、10年間で1億1000万円の資産を減らせる。この結果、何も対策をしない場合に比べ4000万円弱も節税ができる計算になる。

 しかし、この節税術が、早ければ2022年にも封じられる見通しが強まっている。

「資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて本格的な検討を進める」――。

 20年12月に与党が発表した税制改正大綱の中にはこんな記載がある。これは、贈与税と相続税を一体化する方向性を示したものだ。富裕層から税金を取り、公平性を高める狙いがある。

 この議論のモデルは諸外国の制度だ。例えば、米国では生前贈与そのものが、ドイツ、フランスでは一定期間になされた生前贈与が相続税の対象に含まれる。日本と異なり、生前贈与を節税術には使えない。

 それでは、実際に現行の制度はどう変わる可能性があるのか。税理士など関係者の間で根強いのが、ドイツやフランスのように一定期間の贈与を相続税と一体的に課税する仕組みだ。

 新制度の導入後、過去にさかのぼって適用される可能性は低いとみられているが、基礎控除の110万円は撤廃されるとの見方がある。

 現行でも、相続の発生からさかのぼって3年以内の贈与は相続税の加算対象になるルールはある。これは110万円までは非課税となる生前贈与も例外ではない。

 新制度では、この3年以内という期間をドイツやフランスの10年以内や15年以内に延長する可能性がある。その場合、蓄えた資産を老後に毎年、子や孫に贈与して節税することは不可能になる。

 いずれにしろ、早ければ22年にも施行される税制改正で、生前贈与は「禁じ手」となり、相続税の大増税時代を迎えることになりそうだ。

 それでも税負担を軽減したいというのが本音だろう。実は、今からでもまだ間に合い、今しか使えない節税術がある。