
唐鎌大輔
ECBが展開する資産購入プログラムは、意外なほど規模が大きい。コロナ対策は年内8700億ユーロもの購入枠が設定されている。その中でイタリアやスペインの国債に投じられた額は相当なものだ。これはECBにとって大きな火種となる。

米国をはじめ世界各国は、コロナショックに対抗すべく、なりふり構わず金融・財政政策を集中投下している。そのため今後は、米国の拡張財政路線の結果としてドルの信認が棄損し、ドル安になる可能性がある。しかし、ドルの信任が棄損されること自体は悪いことではない。

コロナショックに見舞われた過去2カ月間、金融市場は激烈な動きを経験した。為替市場も例外ではないが、ドル/円相場はおおむね100~110円という近年の大まかなレンジに収まっている。ユーロ/ドル相場でも同様だ。金利差なき世界になった今、円はどう動くのか。

ドル高が止まらない。現在起きているドル高は文字通り「有事のドル買い」であり、リーマンショック直後の最悪期に見られた現象と同じだ。しかし、勢いは落ちてもドル安が潮流になるのかという不透明感もある。「08年型の円安ドル高」はどこへ向かうのだろうか。

コロナショックで金融市場が混乱する中、FRBは2週間で2回の臨時会合を開催し、大幅利下げを行った。これは市場が求める以上の対応であり、緩和策の糊代を失くしてしまった失策とも言える。懸念されるのは、彼らが今後必要に迫られるであろう「次の一手」だ。

クロスボーダーM&Aブームの結果、年度末の資金回帰が円高圧力になるという説があるものの、それほど影響力があるとは考えにくい。ただ、安全資産としての円買いが勢いを失っていることだけでは説明できない背景もある。「3 月円高説」の信憑性を考える。

中銀デジタル通貨(CBDC)は今や金融界の一大テーマとして浮上している。報道通りならば中国がデジタル人民元を発行する日は近い。2020年はCBDC元年になるかもしれない。

景気後退リスクの高まりに先手を打った米FRBによる昨年の「予防的利下げ」は、アジア通貨危機後の1998年の利下げと比較されることが多い。FRBは翌1999年に利上げ軌道に復帰したが、歴史は繰り返すのだろうか?

米国とイランの緊張は足もとで和らいでいるが、予断を許さない状況が続く。為替への影響で見れば今回も「有事の円買い」が見られたものの、実は原油価格が上昇するなかでは、円高より円安のほうが深刻である。今後の為替リスクを考えてみたい。

発生確率は極めて低いが、発生すれば甚大な影響を与える「テールリスク」。2020年は、6つの想定外シナリオに警戒が必要だと、みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏は指摘する。

市場との派手な対話で知られたドラギ氏から欧州中銀(ECB)総裁のバトンを受け継いだラガルド元国際通貨基金(IMF)専務理事。ECBの内部分裂が深まる中、持ち前の調整力が期待されるが、前途は多難だ。

マイナス金利政策導入から欧州では5年、日本では3年が経つが、最終ゴールの物価押し上げは実現していない。継続することが目的化してしまっていると専門家は批判する。

鳴りやむことのないトランプ大統領の口先介入。それでも是正されないドル高を受けて、「言って分からないならドル売り介入の実力行使」という展開はあり得るのだろうか。

トランプ大統領の口先介入に米FRBの利下げシフト――。ドル高の修正は果たしてどこまで進むのか。みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏は、米利上げ8回分と読む。

為替相場の流れは基本的に米国の都合で決まる部分が大きく、ユーロ圏や日本の願望は成就しにくいのが実相だ。しかし、通貨安を渇望するユーロ圏には日本にはない武器がある。

国際通貨基金(IMF)によれば、中国は2022年に暦年ベースで経常赤字に陥る。そのとき、何が起きるのか。専門家は、人民元ショックが再来する恐れよりも、世界がドル高を許容できなくなる可能性を指摘する。

米債券市場の利下げ織り込みが進み、株価が大幅に下がっても円高方向に大きく振れないのはなぜか。背景には、経常収支の「稼ぎ方」の変化があると専門家は指摘する。

厚労省幹部が言及し、物議を醸している業種別・全国一律の最低賃金案。一見無関係に思える欧州債務危機の教訓とは?

米国第一主義を掲げるトランプ大統領が日欧に対して、自動車関税という経済外交カードを再びちらつかせている。発動の可能性は?回避されるとすれば、落としどころはどこか?みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏は、5月から6月にかけて2つのヤマ場があると説く。

出口が見えない英国のEU離脱(ブレグジット)交渉――。そもそも何が問題で、どのような落としどころがあり得るのか。6つの疑問への答えを追うと、完全離脱の難しさが浮き彫りになる。
