村瀬拓人
コロナ禍の長期化で日本経済は厳しい状況が続いているものの、これまでのところ雇用情勢の悪化は限定的である。ハローワーク(公共職業安定所)における求人・求職の動向を調査した厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.13倍と、コロナ前の2年前に比べ0.48ポイント低下したものの、なお求人が求職者を上回っている。

足元の日本経済は、度重なる緊急事態宣言の発令などの影響で一進一退の状況にある。もっとも、国内外で新型コロナのワクチン接種が進むなど、景気の先行きに対する明るい話題も出てきており、企業の投資姿勢には持ち直しの動きが見られる。

新型コロナウイルス感染拡大の収束が見通せない中、家計の消費活動は一進一退の状況が続いている。

総務省の家計調査によると、2人以上の世帯の2020年の消費支出は334万円と、前年に比べ5.3%減少した。これは、2000年以降の調査で最大の落ち込みである。

新型コロナウイルスの感染拡大で、日本経済は厳しい状況が続いているものの、これまでのところ雇用情勢は緩やかな悪化にとどまっている。2020年10月の失業率は3.1%と、19年12月の2.2%を底に上昇傾向にあるものの、リーマンショック後のピークである5.5%(09年7月)を大きく下回っている。10月の有効求人倍率も1.04倍と、依然として求人が求職を上回っている。

新型コロナウイルス感染症の流行により、企業の収益環境は大幅に悪化している。日銀短観の9月調査によると、2020年度の経常利益は前年度比▲28.5%減少する見込みである。利益水準は、半年前の収益計画と比べ3割近く下方修正されており、新型コロナの影響の大きさが見て取れる。

新型コロナウイルスの流行で、日本経済は歴史的な落ち込みを経験している。4~6月期の実質GDP成長率は前期比年率▲27.8%と、リーマンショック直後を大幅に超えるマイナスとなった。緊急事態宣言が解除された6月以降は、景気持ち直しに向けた動きが出てきているものの、マクロで見た経済活動の水準を表す全産業活動指数は、依然として前年を1割下回っている。

2020年4~6月期の実質GDPは、前期比年率▲27.8%と戦後最悪の落ち込みとなった。これから懸念されるのが、失業率の上昇と企業倒産の増加だ。コロナ禍がもたらす未知の構造変化の中で、企業はどのような対応策をとり、政府はそれをどのようにバックアップすればいいのか。

新型コロナウイルスの感染拡大で、景気は大幅に悪化している。4~6月期の実質GDP成長率は、外出自粛の影響を受けた個人消費の減少や、輸出の下振れなどを背景に、前期比年率▲20%程度のマイナス成長が見込まれる。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、足元の景気は大幅に悪化している。民間エコノミストの経済見通しを集計したESPフォーキャスト調査(4月特別調査)によると、1~3月期の経済成長率は前期比年率▲4%、4~6月期は同▲11%と、大幅なマイナス成長が予想されている。

増税による個人消費下振れと新型肺炎の流行で、日本経済は正念場に
2月17日に公表された昨年10~12月期の実質GDPは前期比年率▲6.3%と、前回2014年の消費増税時に迫るマイナス成長となった。増税により日本経済が大きく下振れている姿が示された。

政府の経済対策、成長力の強化には物足りない
政府は2019年12月に、台風などの災害復旧や、東京五輪後の経済活力の維持などを柱とした経済対策を打ち出した。事業規模は26兆円に上り、政府は、実質GDPを1.4%押し上げると試算している。

2019年7~9月期の実質GDP成長率は、4四半期連続のプラス成長となった。今回のGDP統計で注目された消費増税前の駆け込み需要は、前回増税時ほどではなかった。では、次期10~12月期以降に予想される、増税後の景気落ち込みはどれほどのものか。今回のGDP統計から占ってみよう。

消費増税後の個人消費、大幅な落ち込みは回避
10月1日に消費税率が10%へと引き上げられた。前回2014年の8%への引き上げの際は、増税後に家計の消費活動が大きく冷え込んだため、今回も増税後の個人消費の動向が注目を集めている。

人手不足で加速する企業の情報化投資 プラス成長のエンジンに
海外経済の先行き不透明感が強まる中でも、日本経済は緩やかな回復が続いている。8月上旬に公表された4~6月期の実質GDP(一次速報)は、3四半期連続のプラス成長となった。輸出が減少したものの、プラス成長を実現できているのは、内需、とりわけ企業の設備投資が堅調なためである。

2019年4~6月期の実質GDPは前期比年率+1.8%と、市場予想(同+0.4%)を上回る高めのプラス成長となった。今春までは、輸出や生産の減少を背景に悲観的な見方が広がり、景気はすでに後退局面にあるとの見方も出ていた。その見方を覆した原動力とは何か。また、日本経済にそれでも燻る不安とは。

消費増税の大規模対策 単身世帯には負担増 実質可処分所得は減少に
景気の減速感が強まる中、10月に実施予定の消費税率の引き上げを再延期すべきだとの主張が広がっている。7月21日に投開票が行われた参議院選挙でも、野党が増税の延期・凍結を公約に掲げるなど、消費増税の是非が争点の一つとなった。

副業が成長戦略にモチベーションが上がり生産性の向上にも期待
人手不足の緩和や生産性の向上につながるとの期待から、副業や兼業に対する注目が高まっている。5月15日に開催された政府の未来投資会議でも、成長戦略の一つとして、副業・兼業の促進が議論された。

住宅ローン減税は所得の高い層に恩恵逆進的な住宅政策の転換を
消費増税後に景気を冷え込ませないことが、2019年度の税制改正の大きな柱になっている。特に、住宅ローン減税の拡充が注目される。これは、10%に引き上げ後の消費税率が適用される住宅取得について、住宅ローンの控除期間を現行の10年から13年に延長するなどの措置である。
