技術進化で画期的な新しい薬が高額化し、国民皆保険が崩壊するという声が上がっている。これに製薬会社は何を思うのか。皆保険システムを守るために、自身は何ができるのか。(聞き手/ダイヤモンド編集部 臼井真粧美、土本匡孝)
――技術進化で画期的な新しい薬が高額化し、国民皆保険が崩壊するという声があります。
日本の医薬品のマーケットってOTC(大衆薬)も含めて大体10兆円。国民総医療費が今の43兆円から50兆円、60兆円になることがあったとしても、薬剤費10兆円が15兆円になるとは考えていません。比率をどう変えるかが議論になります。
――10兆円の枠の中での配分ということですね。
枠の中で考えれば、難しい病気の新しい薬は保険でカバーするけれども、有効性も安全性も確立していて単価も下がっているものについては、もっと(患者に)負担をしていただくとか。「こっちも嫌。あっちも嫌」では何も動かない。この辺りをどう国民的な議論として持っていくか、各国悩んでいると思います。
欧米は一遍乱暴な政策を入れたりしてね。反発はもちろんあるんですけど、でこぼこしながら着地点を模索している。日本のように何も動かない中で、新しいもの(高額な薬)が出たから問題だ、じゃあその値段を下げようっていうのを連続していくと、欧米の製薬会社が「だったら、日本の国民から望まれるまで新薬は持っていかないのが一番いい」と言い始めてしまう。