このように、企業や経営者が運営する大学は、意外に多い。

 よく見られるのが、日本電産の永守重信会長兼CEO(最高経営責任者)が、モーター技術者の不足に危機感を覚え、自らが運営法人の理事長を務める京都先端科学大学にモーター専門科のある工学部を新設するように、功成り名を遂げた事業家が、業界の発展のために私財を投じて人材育成に乗り出すケースだ。

 ダイエーを創業した中内功氏は、88年に流通科学大学を開校。校名の通り、流通を科学的に研究・教育することを建学の理念とし、学内に設置したコンビニ店舗での実習など実学が充実している。現在は、功氏の長男でかつてダイエー副社長だった中内潤氏が学長を務める。

 似た名前では流通経済大学があるが、こちらは日本通運の系列。物流・流通分野の研究に力を入れており、付属高校もある。

教育活動に熱心だった
ソニー創業者の井深大

 また、かつては系列企業で働く従業員向けに、あるいは卒業後に雇用することを見込んで専門技術や知識を教える高校を運営する企業が多く存在した。

 例えばソニーは、創業者の井深大氏がソニー教育振興財団の理事長を務めるなど、幼児教育をはじめ教育活動に熱心だったことで知られるが、同社は神奈川県の厚木工場に勤務する女子社員向けにソニー厚木学園高校を運営していた。同校は75年に閉校となったが、今も厚木市でソニー(学校法人ソニー学園)は、湘北短期大学を運営している。

 厚木市には、大洋漁業(現マルハニチロ)の創業者の次男、中部謙吉が建てた工業高等専門学校を前身とする神奈川工科大学もある。同校は、社業のためというより、中部の持つ「日本に理系の学校が少ない」という問題意識から設立されたという。

 このように、企業や業界のための人材育成・輩出というよりは、純粋に企業人の教育に懸ける思いから設立された学校も多い。

 ノリタケカンパニーリミテドの創業者、森村市左衛門は71歳のとき、自邸の庭に現在の森村学園の前身となる幼稚園と小学校を開設した。近所の子供20人ほどから始まったという。