モスフードサービスの中村栄輔社長Photo by Koyo Yamamoto

店のコンセプトから料理の1皿に至るまで、外食産業の経営者は消費者の心をつかむスペシャリストだ。個性派ぞろいの「外食王」たちは何を考えているのか。連載「外食王の野望」で取り上げる外食トップのインタビューを通じ、そのノウハウをおいしくいただこう。今回はモスフードサービスの中村栄輔社長。中村社長は、社長を務める上で、トヨタ自動車と日清食品ホールディングスを参考にしているという。そのワケとは。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

食中毒を契機にビジネスの全てを見直した
改革はスピーディーに進めていく

――消費税増税など外食業界にとって2019年は激動の1年でした。

 われわれにとって19年は、18年9月に発生した食中毒事故からの“復活”と位置付けた1年でした。19年3月までに既存店売上高の前年比を100%にするという目標は、一応クリアできた。そして、新しい中期経営計画をスタートし、4月には商品開発部をマーケティング本部の中に置く組織改革を実施しています。

 早速、「MOS JAPAN PRIDE(モスジャパンプライド)」というブランドを立ち上げました。日本生まれ日本育ちのモスバーガーだからこそ、日本の食をあらためて大切にしようという試みです。「海老天七味マヨ」をはじめ、ヒット商品が次々と生まれています。

――そもそも食中毒の発生原因をどう捉えているのですか。

 O157をはじめとした感染症の発生源を特定することは、非常に難しい。野菜なんじゃないか、熱を通していないからなんじゃないかという、ある程度の絞り込みはできますけれど。そういう観点から、少しでも可能性のある箇所については、全工程にわたって改善していこう、レベルを高めていこうと決意を新たにしました。

 社長になった当初は、改革はじっくりと時間をかけて進めていこうと考えていました。ですが、食中毒の発生を受け、ゆっくりしていられないなと痛感した。全ての事項で改革を加速させました。食中毒がわれわれのビジネスの全てを見直す機会になったことは間違いありません。