構造を意識する
まずはもっとも大切な「文章の構造」について説明しよう。
これは「料理の手順」のようなもの。食材や調味料の細かな分量はいったん忘れよう。大事なことは、大まかな手順だ。何を何品、どのように作るか。どういう順番や組み合わせで食卓に出すのか。それを決めずに料理を始めたら大変なことになる。大事なのは「楽しみながら食欲を満たす」という目的だ。そのために「全体の構造をまず考える」ことが必須になる。
「おかずがすべて肉の揚げ物」「最初にデザートを出して次に白いご飯」。それはおかしいと、ほとんどの大人が半ば常識として知っている。だから、事前にざっくりでも大枠の構成を考えるのだ。
その上で、肉を焼き、野菜を炒め、ご飯やスープと一緒に並べる。これがまっとうな手順のはずだ。
文章も同じこと。日本人はついつい細かなテクニックにこだわりがちだが、まずは大枠でもいいので全体像をつかむべきなのだ。それがすなわち「文章の構造」だ。それは「料理の常識」のように、身に付けることができる。
相手を意識する
さらに、料理には必ず「食べる人」がいる。子供や働き盛りなら揚げ物が多くてもいいかもしれない。しかし、体調の悪い人や高齢者なら軟らかいものがいいだろう。アレルギーの人もいるだろう。食べる人の状況に合わなければ、食べてもらえないかもしれないのだ。
ビジネス文章も同じだ。文章を「読む相手」が存在する限り、好き勝手に書きたいことを書くわけにはいかない。相手の状況や性格を踏まえたり想像したりしながら文章を書かないと、読んでもらえないかもしれない。
語感を意識する
このように、(1)文章全体の構造を考え、(2)相手を想像した後に、(3)文章を整える役割を持つのが「語感」だ。それは料理の「見ため」のようなもの。味が良くて、品数や全体のバランスもいいのに、盛り付けが悪ければ興ざめだ。
文章も語感を整えることで、読んでいて気持ちのいい文章になる。相手へ与える印象も格段に変わり、今後も一緒に仕事をしたいと思ってもらえるだろう。
次回から、この「ビジネス文章の3原則」をより詳しく、具体的なポイントやフレームワークとともに解説する。
Key Visual by Noriyo Shinoda