駐在先で人気なのは、先進国
商社妻なりの苦労も多い…
結婚後は、夫婦で花の海外駐在。妻帯者の駐在先で人気なのが、米国やフランスといった先進国だ。「セキュリティーがしっかりした高級マンションにただで住める。家賃相場で言えば、東京に住んでいたときの3~5倍」(総合商社社員)と夢のような生活である。
その一方で、地域手当で稼げる新興国は家族連れに敬遠されるという。行動が制限され、移動するにもドライバーの手配が必要など、リスクが高いからだ。
また、婚活中の女性にとって“勝ち組”ともいえる現役商社マンの妻に話を聞くと、思わぬ苦悩が垣間見えてきた。
「駐在先のヒエラルキーは、旦那のヒエラルキーと駐在歴の長さで構成される。職種で言えば、大使館→商社→金融→メーカーが基本。商社妻は英語が話せることが多いため、英語ができず日本人同士で固まるメーカー妻から嫌われることも多々あった。また現地の日本人会でパーティーが盛んに開催されるが、なじむことができず、耐えられなくなった夫人が帰国を希望するケースも多い」(夫が総合商社勤務の女性)といったように肩身の狭い思いをすることもあるそうだ。
高給・安定を捨て、総合商社を去る社員が急増中
キャリアスピードが遅いことが要因
高給、海外駐在と輝かしい将来が待っている総合商社マン。それでも去る社員が増えており、人事担当の頭を悩ませているという。
「特に、30~35歳での転職が急増中。順調に出世しても、40歳前後で課長、40代後半で部長・本部長が原則。キャリアの進み方が非常に遅く、20~30代で経営に関与できないことに見切りをつけ、退社に至っている。意思決定が遅い大企業体質に、疲れたという声も多い」(転職支援関係者)
かつては高給を求め、マッキンゼーやA.T.カーニーといったコンサルティングファーム、ゴールドマン・サックスをはじめとした外資系投資銀行への流出も多かった。現在は、ベンチャー企業への転職が大人気だ。
自分の力をダイレクトに試せる、CFO(最高財務責任者)やCSO(最高戦略責任者)といったCxOポジションでの転職が増加している。
キャリアスピードで解決策が見いだせなければ、高給や安定を捨てても人材流出は続くといえそうだ。
Key Visual by Noriyo Shinoda, Graphic by Kaoru Kurata