人生の目的なんてなくていいの。どこに向かってもいいのよ

――Tomy先生の、「人生の目的なんてないのよ。皆、自分のグライダーを操縦しているようなもの。着陸したら、それで終わりだからどこに向かってもいいのよ」という言葉も、すごく気が楽になりました。

精神科医Tomy 今って、意識高い系の人たちが多すぎるでしょ? 出世しようとか、お金儲けしようとか、有名になろうとか。そういうのって、基本的な生活をすでに楽しめているベースがあって、その余興としてやるならいいんですよ。

コロナ後に人の心は変わるのか? 「後悔しない生き方」を選ぶ人の条件

 でも、ベースもないのに余興だけ一所懸命やろうとしても、空回りして逆に精神的なバランスが崩れるリスクがありますからね。だから、まずはベースを安定させること。何よりも優先すべきはそこなんです。

 そういう意味では、東京のような都会で人工的なものに囲まれて孤独を感じている人より、もともと人が少ないけど自然豊かな田舎で暮らしている人のほうが、地に足のついた生活をしている印象がありますね。

 田舎の生活って刺激が少なくて退屈だけど、犬の散歩をしたり、畑をいじって、採れたての野菜でサラダ作って食べたり、近所の人とお茶したり。何もないところで人間的な生活を楽しむベースがあるでしょう。自然も豊かだから、朝お天気がいいだけで気持ちなって思えるし。

 でも都会の人って、朝からスマホやパソコンにかじりついて、コンビニで買ったものを食べて、人工的なものだけで生きている人が少なくありません。そんな生活していると、生きている実感がなかなか湧かないと思うんですよね。

――コロナ禍をきっかけに、「仕事って何?」「生活って何?」と考えた人は、まずベースを見直すところから考えたほうがいいということですね。

精神科医Tomy コロナで世界的な危機にならなければ、ベースなんてなくても、ごまかしながら生きていけたかもしれません。でももう私たちは、自分もいつ死んでもおかしくないんだってことを、知ってしまいましたから。そのおかげで、本当に大切なことを考えないわけにはいかなくなったんです。

コロナ後に人の心は変わるのか? 「後悔しない生き方」を選ぶ人の条件

 ベースを見直すためには、人工的なものから少し離れて、五感を研ぎ澄ませてみることです。ポカポカ気持ちのいい日に公園を散歩しているとき、人生の意味とか目的とか考えないでしょ? その瞬間、生きていること自体が素晴らしいんだから、そのことをちゃんと五感で味わうことを意識してほしいんです。

 そして、最低限、自分はこれだけあればいいと思えるものを再確認すること。仕事も生活も、そこから再構築していくと、何があってもブレることなく生きていけると思います。

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第4回 コロナ後に人の心は変わるのか? 「後悔しない生き方」を選ぶ人の条件

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