全世界で開発競争が進む新型コロナウイルスワクチン。早ければ2020年中の認可と国民への配布を宣言する国も多いが、そこには大きなリスクがある。特集『賢人100人に聞く!日本の未来』(全55回)の#1では、スイス・バーゼル免疫学研究所、東京都臨床医学総合研究所・免疫研究部門部長、大阪大学大学院医学系研究科教授などを歴任した免疫学者の宮坂昌之・大阪大学免疫学フロンティア研究センター招聘教授が警鐘を鳴らす。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
新型コロナの獲得免疫は
1年未満で消える
――新型コロナウイルスの感染はどうやって終息するのでしょうか。社会全体が集団免疫を獲得すれば収まるという説もありますが。
集団免疫の獲得によって終息を目指すということは、新型コロナにおいてはあり得ないでしょう。免疫は、いわゆる「城門の門番」として、体内に入ってくるウイルス全てを殺す自然免疫と、城門が破られたときに本丸で特定のウイルスを殺す獲得免疫の2段階構造となっています。獲得免疫とはワクチンやウイルスへの罹患などを通じて後から獲得されるものです。問題は、新型コロナに対してこの獲得免疫がどのくらい持続するのかということです。
はしか、おたふくかぜ、破傷風などは、一度ワクチンを打ったら獲得免疫は20年は維持されます。ところが、新型コロナと同様の構造のコロナウイルスによる鼻風邪の免疫が残るのは半年程度です。毎年インフルエンザのワクチンを打つのもこのためです。新型コロナの獲得免疫も、同様に長続きしないと考えるべきでしょう。インフルエンザ同様に毎年流行し続け、感染者が出続けるものと考えた方がいいでしょう。
――政府は新型コロナのワクチンの早期開発と国民全員への配布を表明しています。
現在の拙速なやり方に強い危機感を覚えます。