記述で残っている一番古い記録は、奈良時代の『続日本紀』。天平12(740)年当時、天然痘がはやっていて、聖武天皇が現在の大阪府柏原市にあった智識寺を礼拝したんです。智識寺は民衆が力を合わせて建立した寺で、聖武天皇はそれに深く感激し、大仏建立を思い立ったと記されています。

「誰でもいい。お金がなければ、一本の枝でも一握りの土でもいいから、より多くの人の気持ちを集めたい」と呼び掛け、当時の人口300万人のうち150万人という、国民の半分が関わった一大事業になった。それが、奈良の大仏です。日本の歴史上一番古いクラウドファンディングといえるかもしれません。

――スペイン・バルセロナにあるサグラダファミリアも同様ですが、教会や寺院など象徴的なものが、数世紀にわたって人々の心を集めるのですね。

 それからもう一つ、「生を再認識させる」のも、宗教の重要な役割です。

 平安時代後期から鎌倉時代にかけての平均寿命って幾つだと思いますか?24歳ですよ。東日本大震災の約1000年前で、とにかく自然災害がひどい時期だった。大震災があり津波があり、浅間山(長野・群馬県)が噴火して大飢饉が起こり……。平安時代後期に500万人だった人口が鎌倉時代で350万人にまで減ったそうです。

 その当時生まれたのが親鸞聖人や日蓮上人で、臨済宗もその時代に中国から日本に入って根付きました。

――天災の多い時代は、宗教的にも重要な転換期になったんですね。

 そうなんです。平安時代までは学問として仏教をやっていて、リアルな苦しみに向き合っていませんでした。鎌倉時代になってから苦しい時代に入り、庶民に根付いたんです。

 誰にでも実践できるよう、お経が短くなって広まりました。災害の多い時代の宗教の特徴は、大衆に向けて分かりやすく、核心を突いていることです。

――今を生きるヒントにもなりそうです。

 その時代の随筆である、『徒然草』や『方丈記』を読むことをお勧めします。いろいろなことが書かれていますが、一貫しているのはやはり、死生観。混乱の世を過ごした先人たちの「どのように生きるのか?」という考えを知ることができます。

 今も未曽有の災害といわれていますが、幸い1000年前と違うのは、私たちには知識と経験があること。そして、1000年前に苦しんだ人たちの知恵もある。だからこそ今、読み直すことに意味があるのです。

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