日本社会の縮図のインデックスよりも
ゲームチェンジをする企業に投資するべきだ

――通常、成長企業であるほど人気化して、株価は割高になりがちです。PERなど株価指標は参考にされますか。

 PERは重要な指標ですけれども、1年間の利益に対しての数字です。確認すべきなのは、PERよりも競合です。一時的な成長鈍化や減益は気にしませんが、参入障壁が破られてライバル企業が台頭したときは売却することもあります。

 成長にブレーキをかける要因も確認します。例えば、やる気が低下した経営者が居座っている、短期成果を出すために長期の仕込みが不足しているなどです。

 また、カスタマーサクセス、日本語でいうと「お客さまが成功しているか」も重視しています。お客さまから得られる利益はサスティナブル(永続性)ではありません。だから、短期的には操作できる部分がある利益よりも、売上高や粗利を重視しています。

 IT企業で例えると、エンジニアの給料を削り過ぎないことが該当します。エンジニアに給料をたくさん払うと短期的に利益は減ります。ですが、サービスが栄えれば、最終的に利益は付いてきます。早く利益を刈り取らずに、増収の結果として利益が増えるのが理想ですね。

――個人投資家の中には、株価指標が割高なグロース株(成長株)を買うことをちゅうちょする人もいます。

 グロースかバリューかという議論は常にありますけど、そこにこだわる必要はありません。課題の深刻さに対して、解いた量が少なければ成長の余地はありますよね。だから、現時点では株価指標では割高に見えても、課題解決が進めば株価は割安になっていきます。後から考えれば、「あの時点の株価はバリューだったね」となるわけです。これが本来のグロース株投資ではないでしょうか。

 繰り返しますが、「課題」や「市場」が現実にあるわけで、蜃気楼を買っているわけではありません。課題を解いていけば、株価はいずれ割安になります。ただし、保有期間中は競合の出現や、組織の崩壊に気を付けます。

――アクティブファンドの多くは、中長期ではベンチマークであるインデックス(TOPIXや日経平均)を下回っています。指数は意識されますか。

 世界の株を買うのであれば、インデックスもいいでしょう。米国株もインデックスでいいかもしれません。ただ、今の日本を丸ごと買いたいでしょうか。日本は伸びていますか、幸せが増えている国でしょうか。もし、そうではないと思うなら、インデックスでない方がいいと思います。

 インデックスに投資するということは、あなたが文句を言っているものも含めて買うということ。日本社会の縮図に投資するのではなく、それをひっくり返す企業やゲームチェンジをする企業に投資するべきでしょう。

――運用成績に対するプレッシャーはありませんか。

 インデックスは意識しないようにしています。もちろん負けることもありますが、それもいいことだと思っています。何かと比較されないと、問題点が見えにくいですからね。

――近年、ESG(環境・社会・企業統治)投資も注目度が高いですが、銘柄選びに取り入れていますか。

 ESGは重要な考え方ですので、ひとつの切り口として位置付けています。「課題解決」を重要視しているので、このような考え方で投資をすると、結果としてESG投資になりやすいですけれど。

――個人投資家に銘柄選びのアドバイスをお願いします。

 まずは身の回りにある自分が課題だと思うものや、つらいことを考えてみたらどうでしょうか。親の介護、子供の受験、自分の英語力……、いろいろあると思います。例えば、英語に悩んでいるのであれば、「オンラインで外国人講師と会話できる」サービスは需要があるのかと想像してみる。欲しいサービスだった場合、次の段階として「自分のように思う人はどれぐらいいるだろうか」と市場規模を考えてみましょう。

 上場している4000銘柄からスクリーニングするのではなく、課題を解きにいく企業を探していくわけです。なぜなら、業績や株価指標などの数字から入ると、なかなか中長期でホールド(保有)するのが難しくなりますから。

 決算を見るときは、直近の数字だけでなく時系列で見るようにしましょう。あとは、今回のコロナ禍のような有事の対応も重要です。有事に強い企業をレジリエントな企業と言いますが、そういった企業を探せばいいのではないでしょうか。

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