K字決算#06Photo:Sjo/gettyimages

コロナショックからの立ち直りが二極化する「K字回復」が自動車業界でも鮮明だ。トヨタ自動車は需要増を追い風に業績を立て直し、ホンダや日産自動車に差をつけている。メーカーの“格差”は下請けの部品サプライヤーにも伝播しているが、将来の成長に向けた“種まき”である研究開発費に目を向けると、必ずしもトヨタ系が優位とはいえない。他ケイレツが節約する中で、ホンダ系はコロナ前とほぼ変わらない額を死守している。特集『戦慄のK字決算』(全17回)の#6では、ホンダ系だけが投資の手を緩めない理由を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

トヨタがコロナショックから復活
OEMの力関係がケイレツに伝播

 新型コロナウイルス感染拡大を機に、自動車業界の業績も「K字型」に推移し、勝ち組と負け組の格差が広がっている。

 トヨタ自動車は2020年4~9月期の需要減から驚異的な復活を遂げ、21年3月期には1兆9000億円の純利益を稼ぐ見込みだ。ホンダも巻き返し、純利益は前期を上回る4650億円で着地する見通しではあるものの、トヨタには遠く及ばない。

 一方で日産自動車は販売台数の減少が響き、純損益は5300億円の赤字を計上する見通しと、明暗がくっきり分かれている。

 こうした自動車メーカーの格差は、完成車の競争力を支える下請け企業(サプライヤー)の業績にも反映されている。

 トヨタ・ホンダ・日産の主要サプライヤー8社ずつ、計24社の20年4~12月期の売上高を比較すると、トヨタ系が圧倒的優位な状況が浮き彫りになる。

 トヨタ系のデンソー(3兆5086億円)やアイシン(2兆5045億円)、豊田自動織機(1兆5326億円)の売り上げ規模が、ホンダ系8社でトップのテイ・エス テック(2581億円)、日産系8社でトップの日産車体(2363億円)を圧倒しているのだ。

 しかし、コロナ禍前後の売上高と研究開発費の推移に着目すると、ホンダ系が苦境においても“太っ腹”の投資を続け、攻めの姿勢を見せていることが分かる。