海外の節税#10Photo:PIXTA

米アマゾン・ドット・コムの創業者、ジェフ・ベゾス氏や米マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ氏など、ビリオネアの立て続けの離婚が話題になっている。野次馬の関心の多くは多額の資産の行方だ。日本の富裕層でも近年、離婚に伴う資産の目減りを見越した対策がひそかに流行中だ。結婚適齢期の富裕層の間では「嫁(夫)ブロック」なる隠語まであるという。特集『海外の節税 富裕層の相続』(全21回)の#10では、高給会社員や医師も参考にできる、「財産分与」対策編をお送りする。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)

「夫婦財産契約」を取り交わし
離婚リスク回避に走る富裕層

 米国のビリオネアには及ばないにしても、富裕層が離婚すれば多額の資産を夫婦で分割しなければならないのは、日本でも同じ。

 今月、「NEWS23」(TBS系)のメインキャスター、小川彩佳氏と、医療ベンチャー、メドレーの前代表、豊田剛一郎氏の離婚成立が明るみに出た。一部メディアによれば、豊田氏から小川アナへの「財産分与」の金額は、10億円と報じられた(小川アナ側はこの報道を事実誤認としている)。

 その金額の真偽はさておいて、財産分与とは、婚姻中に夫婦で協力して築いた財産について、離婚時にそれぞれの貢献度に応じて分配する制度だ。富裕層の離婚となれば相応の額になることは間違いない。そして、「それぞれの貢献度に応じて」とあるものの、実際には半分ずつに分けるのが原則となっている。

 下図を見てほしい。財産分与の対象となる財産は、婚姻期間中に築いた「共有財産」に限られる。婚姻前や婚姻中でも離婚を前提とした別居中に築いた財産などは「特有財産」とされ、財産分与の対象外だ(別居中に発生する「婚姻費用」については7月31日〈土〉配信予定の本特集#20を参照)。

 とはいえ、共有財産と特有財産の境界線は、婚姻中にあいまいになりがちだ。例えば起業家なら、婚姻前に設立した自社の成長や上場に伴う株価上昇分。婚姻前から所有していた高利回りの不動産。そして、もともと特有財産だったが、共有財産と混在してしまった財産……。これらはいずれも、場合によっては財産分与の対象になる可能性があるのだ。

 この離婚による資産リスクを懸念する富裕層は少なくなく、結婚を希望する富裕層の間でひそかに広がっているのが、海外富裕層やセレブの結婚で取り交わされることが多い「夫婦財産契約(婚前契約)」だ。

「ここ数年、富裕層やベンチャー起業家、医師などの間で、婚姻前に夫婦財産契約を望むケースが増えています。契約によって、財産分与が自分個人ないし自社に及ぼす経済的インパクトをコントロールし、その影響を予測の範囲内に収めることが可能になります」と言うのは、弁護士でありシニア・プライベートバンカー(富裕層向け金融コンサルタント資格)である、岩崎総合法律事務所代表の岩崎隼人弁護士だ。

 夫婦財産契約とは、結婚を考える男女が婚姻前に取り交わす契約で、財産の管理方法や離婚後の財産分与などについて取り決めるものだ。

 次ページからは、富裕層はもちろん、結婚を考える高給会社員や医師なども参考にできる、具体的かつ結婚相手から嫌がられない夫婦財産契約のノウハウを解説しよう。