農協の大悪党#10Photo:JIJI

農協の共済事業の大元締めであるJA共済連などJAグループ全国組織の役員を25年以上務める中川泰宏は、在任期間が断トツに長い長老格の農協リーダーだ。その“実行力”と“ゴネ力”により農協界での存在感は圧倒的である。連載『農協の大悪党 野中広務を倒した男』の#10では、中川のJAグループ内での振る舞いや、JA全農、共済連などに与えた負の影響を検証する。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

JAグループにはびこる中川の子飼いたち
京都へ政治資金を貢ぐ他県会長も!

「中川は例外的な存在だ。あんな怪物のような男が、他に農協界に現れるとは思わない。彼をJAグループの象徴のように書かないでほしい」

 あるJAグループ全国組織関係者の言葉である。確かに、中川泰宏は規格外の農協リーダーだ。しかし、決して「例外」とはいえない。

 25年以上JAグループの全国組織役員を務めている農協リーダーは他にいない。いないどころか、2期6年程度でリタイアする全国組織役員が多い。中川から見れば、こうした凡庸な農協リーダーなど取るに足らない存在なのである。

「僕ね、25年間全国組織(の役員をやって)おるんやけど、どんどん(周りの全国組織役員を務める都道府県農協中央会会長の)器が小さくなってきたわ。昔の組合長さん会長さんの家いうたら門屋があって、大きな庭を持った金持ちの家ばっかりやった。最近は職員上がりの組合長も増えてきたし、器が小さなってきた」という講演での発言に、他の農協リーダーを軽視する中川の姿勢が表れている。

 実際、JAグループには中川の力を頼って保身に走る“器の小さな”県農協中央会会長や、幹部職員が少なからずおり、役員選出の投票などで同調する派閥を形成している。

 JAグループ全国組織の理事長や社長などの選出などの選出では通常、根回ししてつくられた人事案が都道府県の農協中央会会長で構成する経営管理委員会(取締役会のようなもの)に追認されるのだが、中川には役員の人事案をひっくり返すゴネ力がある。

 JAグループ内で、「京都が介入した」といえば中川がゴネているということであり、「京都の力を使った」といえば、幹部職員らが出世や保身のために中川を頼ったということと同義なのである。

 では中川のJAグループ内での影響力拡大の“やり口”を見ていこう。