【インタビュー拡大版】デジタル化、代理店、少短、22年の重点分野は?

コロナ禍初期の営業職員による対面営業自粛を経て、非対面営業に取り組むなど対応を迫られた生命保険業界。2021年は回復に至ったのか。ESG投資など、新たな取り組みも始めた生保業界の22年について、どのような展望を描いているのか。「週刊ダイヤモンド」2021・2022年12月25日・1月1日新年合併特大号に掲載したインタビューの拡大版をお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部 片田江康男)

業界で進めてきた「3C」
営業手法の選択肢拡大は必須

――2021年は生命保険業界にとって、どのような取り組みをした年だったのでしょうか。

 コロナ禍、カーボンニュートラル、カスタマーセントリック(顧客本位の業務運営)の「3C」に取り組んだ一年でした。

 まず、コロナ禍については、上半期は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などが発令されていましたので、依然として緊張感を強いられました。もっとも、営業現場では、コロナ前の営業職員による対面営業主体のときにはなかなか進められなかった、営業のデジタル化を各社は一気に進められたと思います。

 ただし、やはり保険会社としては、保険金のお支払いを確実に行うことが一番の使命です。コロナ禍の初期から、在宅治療でもみなし入院として保険金の支払いを行う方針を決めて、業界全体で支払いをスムーズに行うことができたと思っています。そういう意味では、社会的な責務を果たせただろうと思っています。

 カーボンニュートラルは、生保は機関投資家として、社会の脱炭素化を後押しすることを進めました。金融事業そのものを通して脱炭素に貢献することには限界があります。出資先や融資先の脱炭素化を支援する取り組みを、各社が行っています。

 生保協会としては、責任投資原則に基づいて、協働エンゲージメントを進めました。これは引き続き実施していきたい。

 最後の顧客本位の業務運営については、生命保険協会で乗り合い代理店の業務品質の在り方について議論を進めました。それまでは代理店各社が、元受け保険会社それぞれと顧客本位の業務の在り方を議論していましたが、代理店の負担が大きいので、協会で業務品質の基準を統一していくという取り組みです。

高田幸徳・住友生命保険社長たかだ・ゆきのり/1964年生まれ。大阪府出身。88年4月住友生命保険入社。2019年7月ブランドコミュニケーション部、CX企画部、営業企画部、Vitality戦略部担当(企画部副担当)を経て、21年4月より現職。 Photo by Yoshihisa Wada

――これまでなかなか契約や保険金支払い手続きのデジタル化が進みませんでしたが、今回は進んだと。

 お客さまによっては、紙ベースの手続きを希望されるケースもあります。コミュニケーションのツールも、SNSがいいのかどうかもお客さまによって違いますよね。

 そんな中でコロナによって非接触が求められる中で、われわれだけではなくてお客さまの理解も進みました。そうした事情があって、今回は業界全体でデジタル化が進んだと思います。

 ただ、契約にいたるプロセスを見ていくと、皆さんどこかのタイミングで実際にお客さまと対面しています。最後に対面するというケースが多いようですね。

 今後もどのような形が一番安心感を得られるか。選択肢を広げていくことが必要だと思います。