5類への移行に「賛成派」だった筆者が
その意見を翻した訳

 かくいう私は、新型コロナ感染拡大の「第1波」と「第2波」の間だった2020年8月以来、新型コロナを「5類」扱いにすべきだと主張してきた。その理由は「医療崩壊」を防ぐことや、経済活動をより活発化させて、倒産や自殺者の増加に歯止めをかけることだった。

 だが私は、昨今の状況を踏まえ、「その考えは少し間違っていたかもしれない」と思い直している。

 既存の類型に無理やり当てはめ、「2類相当」「5類」などと二者択一で議論するのではなく、新型コロナに特化した「新しい分類」を決めて移行する方が適切だと考えるようになったからだ。

 これはもちろん、現在のように「2類」をベースにした便宜上の「新しい分類」ではなく、本当の意味でゼロから考えられた分類である。

 その一例として本連載では、高齢者や基礎疾患を持つ人と若年層を切り分けた対策を講じることで、「防疫と経済の両立」を実現する「第3の道」についても提案してきた(第248回)。

 若年層については季節性インフルエンザと同じような対応にしつつ、高齢者や重症化リスクが高い人に限定して、ワクチン接種や治療費などを公費負担にする。教育についても、「少しでも感染者が出たら休校・学級閉鎖」という厳しい措置を講じる学校をさらに減らし、インフルエンザの流行と同じ基準で構わないことにする。

注:本稿執筆後の1月24日に、政府が全額国費負担による新型コロナウイルスワクチンの無料接種を4月以降も続ける方針を明らかにした。

 一方で、高齢者への「家庭内感染」の防止策を手厚くする。高齢者と若年層が同居する家庭では、現在家族に感染者がいなくても、若者がいつ新型コロナを家に持ち込むか分からない。そこで、不安に感じる高齢者や基礎疾患を持つ人の希望があれば、隔離施設にすぐに入れるようにする。こういった具合だ。

今の日本に必要なのは
前例のない「新カテゴリー」

 これらの施策の妥当性は専門家の判断に委ねたい。だが、「2類相当」か「5類」かの二択で思考停止している今の日本には、年齢や感染リスクに応じて公費による支援の内容を変えるなど、柔軟な発想が必要なのは確かだろう。

 もっと早くから、政策にこうした視点を取り入れていたらどうだったか。経済活動をもっと拡大できて、国民生活は救われていたのではないか。

 日本では、政策決定過程で「制度を改革する」という発想が乏しい。前例を踏襲し、既存の制度を守ることが優先されて、制度に政策を合わせる官僚的でテクニカルな議論に終始することが多い(第265回)。新型コロナ対策では顕著にその傾向が出た。今後は、その弊害を避けることが重要だ。

 ゆえに、私はこの際、感染法上の分類に「新型コロナウイルス感染症」に特化した、既存の枠にとどまらない新カテゴリーを作るべきだと提案したい。