5年間の復元プランに加えて
認識しておくべき2つの点

 今回の5年間をかけたコロナ前水準への復元プランは評価できる一方で、加えて認識しておくべき点を二点挙げたい。

 一つは、本則税率との関係である。上記の図からも分かるように、航空機燃料税の本則は、航空機燃料1キロリットル当たり2万6000円であり、11年度以降、訪日外国人旅行者の地方誘客を拡大することを目的に、3度の延長(14年度から3年間、17年度から3年間、20年度から2年間)とともに、20年度まで、1万8000円の水準へと引き下げられていた経緯がある。

 この視点から見れば、5年の回復プランは、コロナ前水準への復元であって、本則への復元ではないことが分かる。

 本則との比較で見れば、コロナ禍での軽減に加えて、訪日外国人旅行者の地方誘客を拡大することを目的にした軽減が引き続き継続しているとも読み取れる。軽減を受ける航空会社は、コロナ前水準に向けて収支改善努力を続けるとともに、このコロナ前水準から継続している軽減に対しても、訪日外国人旅行者の地方誘客を拡大するという目的に対する説明責任が伴うことになる。

 もう一つは、航空機燃料税の使途との関係である。航空機燃料税は、空港整備勘定というお財布に入り、空港整備・運営の原資となっている。すなわち、お財布の収入が減少すれば、出口の空港整備・運営の原資が減少することになり、お財布の運営が困難となることを意味する。

 収入にも変動があり、空港整備など支出にも変動がある。毎年の収支がバランスする必要はないが、長期的には、航空会社や利用者に十分な税負担をしてもらい、持続可能な形で、空港整備勘定が運営され、空港の整備・運営を含む航空行政を行っていくことが求められる。

 なお、空港整備勘定は、その名の通り整備が落ち着き、借入金が返済された後には廃止される方向とされているが、空港運営にも費用がかかることや、運営からの収入もあることから、その出入りを明示する意味でも、特別な勘定を残す議論も考えられる。この件に関しては、またの機会にしたい。

 今回の軽減により空いた穴は、財政投融資という形で資金調達されており、20年度から23年度の合計で、4545億円に上っている。将来は、その返済が求められる。軽減を継続すればするほど、財政投融資からの借り入れは大きくなり、将来世代の航空利用者の負担も拡大する(空港整備勘定における借入金残高は、19年度の4964億円から、23度には8204億円までに膨らんでいる)。

 コロナ前水準への復元プランが見えた今、するべきことは、このプランを確実に実行することが、何よりも重要となる。この確実な実行は、将来の返済、および今後の安定的な空港整備勘定の運営(老朽化対策を含めた空港運営および空港整備)に対し、財務省、国土交通省および航空会社が、責任感を持って対応することと同値である。そうしてこそ、これまでの軽減による支援が生かされるであろう。

 中長期的な視点で、今回行った軽減による減収分を取り戻せる制度設計(具体的には、軽減の廃止や、税や利用料の引き上げ)をしておくことが、財政規律の意味でも求められる。

 今回、設計された5年プランは、その意味では、大きな意味があるであろう。航空機燃料税は、国内線のみに課税され航空会社が支払う税であり、国際線には課されていない。すなわち、国際線のみを利用する航空会社や、インバウンドを含む、その利用客は負担していない。

 むしろ、世界の流れに従い、空港利用者から集める「国版のPSFC(旅客サービス施設使用料)」のような形など、コロナ前水準への出口が見えた今、来年度以降に、税制の在り方に関する議論も検討を始めるべき時期であろう。

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