明確な絵が描けないAIの可能性・成長性
現時点でチャットGPTなど生成AIの設計、開発などに関して、米国は中国をリードしている。米国は中国の半導体関連企業への禁輸措置をさらに強化するなどし、ファーウェイをはじめとするIT先端企業の成長をより強く抑え込もうとするだろう。それによって、先端分野における中国の取り組みが鈍化する可能性がある。
翻って米国をはじめ主要先進国のAI利用には、克服されるべき課題も多い。チャットGPTに関して、誤った検索結果の提示や、子どもの教育への配慮などの懸念が多く指摘されている。
一例としてアップルはチャットGPTを用いて過去のメールを検索し、自動で文書を作成するアプリ、「ブルーメール」のアップデートをしなかった。AIを用いることで定型化された業務の効率化などは期待されているものの、現時点では米中対立の先鋭化、人権への配慮、さらには人類の学ぶ意欲への悪影響など、AI利用がどのように進捗(しんちょく)するか不確定な要素は多い。そう考えると、年初来のAI関連株の上昇は、「行き過ぎ」に見える。
加えて、主要先進国は当面の間、インフレ沈静化のために金融を引き締めなければならない。米国を中心に世界的に金利はさらに上昇し、株価は下落しやすくなる。特に、期待先行で株価が上昇したAI関連銘柄への売り圧力は相対的に大きくなりやすい。
懸念されるのは、世界的に株価が下落するタイミングで、先端分野での米中対立の先鋭化が本格化する展開だ。AI、半導体、さらには人権の分野で米中対立が一段と熱を帯びれば、サプライチェーンの混乱が再燃する。台湾侵攻の緊迫感も高まり、中国ではなく他国に生産拠点をシフトさせる動きも激化するだろう。
そうなると、これまで以上に在庫を積み増そうとする企業は増えるに違いない。それに伴い、各国企業のコストは増加し、世界経済と金融市場の不安定感が追加的に高まると予想される。現在、AI関連企業を物色する投資家は多いが、チャットGPTなどの利用は一筋縄にはいかないだろう。