二人の女性議長経験者からみた、活躍する女性政治家の条件とは女性で初めて参議院議長を務め、国土交通相などを歴任した扇千景。政界で大輪の花を咲かせた稀有な女性政治家だ。扇のように政治全体を大きく動かす女性国会議員はその後、登場していない Photo:JIJI

「凛としたたたずまいは決して忘れない」――。3月27日昼、東京・芝公園の増上寺で営まれた扇千景の葬儀で元首相小泉純一郎が読んだ弔辞の一節だ。3月9日、89歳で死去した扇は女性で初めての参議院議長。その議会運営は与野党に偏ることなく公平無私を貫いた。

 一方で人間国宝だった坂田藤十郎(故人)の妻としても手抜きはなかった。藤十郎が出演する日には決まって歌舞伎座の玄関で贔屓筋に挨拶をする扇の姿があった。葬儀には首相の岸田文雄、元首相の森喜朗、小沢一郎が率いた旧自由党を離れ、一緒に保守党を結成した元自民党幹事長の二階俊博ら多数の政治家が参列した。

 扇の前には旧社会党の委員長から女性として初めて衆議院議長になった土井たか子(2014年85歳で死去)がいた。扇は宝塚の女優から、土井は憲法学者から政治の道へ入ったが、共に経歴とは無縁の世界で大輪の花を咲かせた。偶然にも衆参の女性議長経験者は共に神戸市の出身。上品さとどこか「関西のおばちゃん」の庶民的な感覚も持ち合わせていた。

 二人の女性は平成の時代に入って政治が激しく揺れ動いた乱世に議長となり、その才を発揮したが、その後は政治全体を大きく動かす女性国会議員は登場していない。女性の首相となるとまだ霧の中だ。一時は東京都知事の小池百合子(70)が“頂上アタック”を試みたことがあったが、登頂はできずに終わっている。その後、小池は胸の内を明かしてないが、議院内閣制の日本ではまず国会議員に復帰することが大前提だ。来年7月に都知事の任期が巡ってくる。そこが小池の分かれ道になるだろう。