ハイブリッド車に続く世界的ヒットの実現は…
1990年代以降、日本企業はトヨタ自動車を筆頭にハイブリッド車の世界的ヒットを実現した。ただ、それに続く高付加価値の商品が見当たらない。コロナ禍を境に、わが国のデジタルデバイドの深刻さも鮮明化した。
それにもかかわらず、能動的に収益分野を拡大し、高成長の実現を狙う企業は限られている。FCNTの民事再生法申請は、これまでの発想で企業が成長を目指すことが限界に差しかかりつつあることを示唆する。
わが国企業は、スマホ企業が凋落した教訓を生かすべきだ。一例として、デジタル分野など成長期待の高い分野に進出して収益の得られる分野を拡大することだ。反対に、それが難しくなると、環境変化に取り残される企業は増えるだろう。収益力・財務体力は低下し、長期の存続は難しくなる恐れも高まる。
最近、FCNT以外にも破綻に陥る国内企業が目立つ。4月、不動産のユニゾホールディングスが民事再生法を申請した。コロナ禍によるインバウンド需要の一時消滅、物価上昇による事業運営と資金調達コストの増加などが重くのしかかった。
中小企業の倒産件数も増加している。中小企業庁「倒産の状況」によると、22年12月以降、倒産件数の増加率は前年同月比20%を上回って推移している。23年4月末の倒産件数は前年同月比25.5%増の610件だった。うち、70%超が販売不振を理由に倒産した。
バブル崩壊後の30年以上にわたり、日本全体で「現状維持の発想」がまん延している。その結果、事業規模の大小にかかわらず、企業にとって能動的に収益分野を拡大し、より高い利益率の達成がままならなくなっている。
今後の展開次第では、米欧で物価は高止まりし、金融引き締めは長引きそうだ。世界経済の後退懸念も高まるだろう。それが現実となれば、わが国の経済成長率は停滞し、事業運営に行き詰まる企業は増えるはずだ。そうならないためにも、本邦企業はFCNTなどの凋落を教訓とし、稼げる商品を生み出すことに迫られている。