東京ガスの笹山晋一社長CEO(最高経営責任者)東京ガスの笹山晋一社長CEO(最高経営責任者) Photo by Masato Kato

ガス業界最大手で、新電力2位でもある東京ガスの新社長CEO(最高経営責任者)に4月、笹山晋一氏が就任した。同社は前期に過去最高益を更新したものの、笹山氏に浮かれた様子はない。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、笹山氏のインタビューをお届けする。同社の液化天然ガス(LNG)事業や電力事業の展望とは。そして、過去最高益でも電気料金の値上げに踏み切った理由については何と答えたのか。(聞き手/ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

総還元性向を1年半で2度引き下げ
笹山氏「企業成長で株主還元したい」

――2023年2月の会見で、当時副社長だった笹山さんから、総還元性向を5割から4割へ引き下げる方針の説明がありました。21年9月に6割から5割へ変更したばかりでした。

 1年半の間に変えて、投資家の方々にはご迷惑をおかけしました。

 1年半の間に何があったかというと、もちろん脱炭素の加速もありますし、われわれが力を入れている水素、e-メタン(合成メタン)で、ある程度の見込みが出てきたということもあります。責任あるトランジション(移行)のために、大規模なプロジェクトが控えていて投資が必要なのです。

 もう一つが、この1年半の間にロシアのウクライナ侵攻がありましたので、想定していなかった地政学リスクが出てきました。それに伴い、事業環境のボラティリティー(変動率)が大きくなっていますので、対策をとらないといけない。つまり一定程度の資金が必要なのです。成長投資することで企業価値を上げ、(それをもって株主)還元とさせて頂けないだろうかという思いです。

――仮に再エネ企業を買収するにしても、買収価格は高くバブルになっています。この点も総還元性向を下げて資金を確保する理由では?

 直接的にはそんなに意識していません。ただ、脱炭素関連には大規模な投資が必要です。再エネも洋上風力が中心だと大型投資が必要ですし。大型投資なのか買収なのかの違いはあれど、資金が必要なのは確かです。

――キャリアを振り返ると、笹山さんは東京ガスの「電力事業の立役者」だとか。東京ガスは新電力業界の販売電力量で、全体で2位、主に家庭向けを意味する低圧で1位です。今後の方向性は?