「ドル高・原油高」共存が招く欧米追加利上げ、高まる世界経済“大幅後退”の可能性Photo:PIXTA

ドル高は通常であれば原油安要因だ。しかし、今は産油国の減産継続もありドル高と原油高が共存している。それは米国や欧州へのインフレ圧力となり、追加利上げの公算を大きくする。さらなる利上げは2024年に世界経済の大幅後退の可能性を高める。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)

米国10年債利回り上昇で
ドル高が進行中

 9月27日のニューヨーク市場で、ユーロドルが約9カ月ぶりに1.05ドルの節目を割り込んだ。ドル円も150円を目前にしており、米国10年債利回りが大幅に上昇するなかでのドル高が顕著になってきている。

 FRB(米連邦準備制度理事会)は9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で追加利上げを見送ったのだが、他方、24年末のFF(フェデラルファンド)金利の見通しを5.0%超に引き上げ、つまり、利下げを急がない姿勢を鮮明なものとしている。

 これまでの利上げでも米国経済の減速は確認されず、高金利下でも米国経済の成長が続くとの期待と相まって米国10年債利回りは4.5%を上回っており、これがドル高の最大の要因となっているといえそうだ。

 ただ、ドル高は米国10年債利回りが上昇する前から示唆されており、具体的には長らく続く中国経済停滞が強いドル高圧力となっている。

 18~19年の米中貿易摩擦局面などでは、中国経済の減速がそのまま人民元安につながり、結果、ドル高圧力が高まったが、ドイツ経済の中国への依存度なども意識され、中国経済減速≒ユーロ安≒ドル高という構図も鮮明化している。

 次ページ以降、今後のドル相場の行方を検証するとともに、欧米の金融政策の行方について分析していく。