日本と英米独は
そもそも同じ土俵ではない

 だがそれでも、日本が国際社会で“手柄”を得ようとするのは得策ではない。

 そもそもG7の一角である英国は、パレスチナ問題の火種である「三枚舌外交」を展開していた当事者である。ナチスによる「ホロコースト」(ユダヤ人大量虐殺)がパレスチナ問題に根深く関わっているドイツも同様だ。米国にはユダヤ人の市民が多く、ユダヤ人の利益を守るためのロビー活動(ユダヤ・ロビー)も盛んである。

 そうした国々と日本では、過去の歴史があまりにも異なる。他国と同じ土俵に立ってアピールするのではなく、「日本はそのままでいい」のではないか。

 日本を取り巻く状況に目を向けると、国民はインフレに苦しんでおり、石油などのエネルギーの安定供給の確保が欠かせない(第339回)。今後の日本の動きによって、中東との関係が悪化するようなことがあってはならない。

 その上で「台湾有事」の懸念も高まっており、米国やNATOとの安全保障体制を強化する必要もある(第310回)。これらを崩すリスクも避けるべきだ。

 では何をすべきかというと、日本が掲げる「外交の原則」を貫くことだ。イスラエルと、将来の独立したパレスチナ国家が平和かつ安全に共存する「2国家解決」の支持である。

 そのためには、ガザ住民のための人道回廊の設置や、人道援助機関のアクセスの確保といった施策が欠かせない。

 どちらか一方に肩入れしているわけではないため、「バランス外交」と批判される可能性もある。派手なアピールにもつながらない、和平に向けた極めて地道な施策だ。

 だが、この施策は住民の救済にとどまらず、エネルギーの安定供給や安全保障体制の強化など、回りまわって“日本のメリット”にもつながるかもしれない。「サハリンI・II」の事例と似た構図だ。

 そのため、もし日本が今後「ガザ人道危機」の解決において、G7の中で目立った成果を上げなかったとしても「それはそれでいい」というのが筆者の見解だ。繰り返しになるが、その場合も「失敗」と断定するのは早計である。