日本メーカーが生き残るのに必要な方策
EVシフト&「全固体電池」の早期実現
円安によるかさ上げ効果もあり、足元の日本の自動車メーカーの業績は良い。ただ、BYDなどに対抗することができないと、東南アジア市場をはじめ強固だった地盤を失うことになりかねない。
そうなると、わが国の経済が自動車の輸出によって回復を目指すことも難しくなるだろう。展開次第で、わが国の自動車産業が、1990年代以降の電機・家電業界の二の舞いになる恐れもある。
そうならないために、わが国全体で、EVシフトへの対応を徹底して強化することは急務だ。求められるのは、EV分野で、価格、航続距離、安全性で競争力のあるモデルの投入を急ぐことだ。海外企業とも従来のアライアンスを見直すなどして、バッテリーの調達や生産体制の強化を急ぐ必要がある。
次世代の動力源として期待される「全固体電池」の実用を、早期に実現することも欠かせない。今のところ、全固体電池やその関連部材の特許に関して、わが国は世界トップの地位を保っている。その間に、充電方式や安全性、リサイクルなどの規格を含め、世界全体の競争ルール形成をも主導しなければならない。
なぜなら、基礎技術で優位性があったとしても、そうした取り組みが遅れると中国などに追い抜かれる恐れが増すからだ。車載用のリチウムイオンバッテリーのシェア低下などを見れば、全固体電池に関しても、現在の優位性が長く続くとは限らない。競合相手に先駆けて、高付加価値型の新製品を市場投入できるか否かが問われている。
今後、主要先進国は産業政策をさらに強化し、自国製のバッテリーなどを用いたEV普及が加速する。EV分野に新規参入を果たす企業も増えるだろう。わが国の自動車メーカーが優位性を発揮した東南アジア市場などでは、BYDなどとの競争力がさらに高まるはずだ。
わが国の自動車関連企業は、徹底してEVシフトを強化し、全固体電池などの早期実用を目指す必要がある。政府としても、そうした取り組みを補助金なども使ってより強力に支援し、民間のリスクテイクをサポートすべきだ。いずれも中長期的に、わが国経済の成長に大きく影響するだろう。