生保・損保・代理店の正念場#16

携帯電話事業と異なり、楽天グループの金融事業は好調だが、こと楽天保険グループに限ってはそうではない。特集『生保・損保・代理店の正念場』(全31回)の#16「楽天保険の泥沼(下)」では、楽天損害保険の惨状と危うい資産運用、見せ掛けの財務のからくりをつまびらかにする。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)

新基幹システムと危うい資産運用で
迷走を続ける楽天保険グループ

 楽天グループの金融事業の一角を担う楽天保険グループ。老朽化が進んでいる楽天生命保険と楽天損害保険の基幹システムを全面的に刷新し、業界初となる「生保と損保の一体型の新基幹システム開発を行う」とぶち上げたが、迷走状態にある。

 というのも、長期の保障を提供する生保と1年更新が基本の損保とでは、そもそもシステムの設計思想が全く違うのに加え、システム開発を請け負ったのが、保険会社の基幹システムでの実績に乏しいシステムベンダー、シンプレクスだったからだ。

 結果は火を見るより明らかで、度重なる遅延とともに開発費用は増大を続け、2022年春ごろから始めたシステム開発は、24年3月に頓挫。その不透明な開発経緯について、金融庁が保険業法128条に基づく報告徴求命令を出すに至っている。

 そして、このシンプレクスによる開発をゴリ押ししてきたのが、楽天生命と楽天損保などの親会社、楽天インシュアランスホールディングス(IHD)社長の橋谷有造氏に他ならない。その経緯については、本特集#9『楽天保険グループ新基幹システムの迷走、金融庁による報告徴求命令に発展!【楽天保険の泥沼(上)】』で詳述した通りだ。

 もっとも、楽天保険グループが迷走しているのは、新基幹システム開発の頓挫だけではない。楽天損保の財務内容がすこぶる悪いことに加え、会計上の見せ掛けの利益のために、危うい資産運用を行っているのだ。

 次ページでは、楽天損保の苦境の実態や見せ掛けの財務スキームのからくりを開陳する。