今年は世界中の国・地域で、今後の政治の方向性を大きく左右する「選挙イヤー」であることが、各所で話題になっている。7月に入り、いよいよ後半戦へと突入。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、14年ぶりの政権交代が起きた英国のエネルギー政策の方向性について考察する。(エネルギーアナリスト 巽 直樹)
世界情勢に最も影響を与える
11月の米大統領選前にヒートアップ
今年は世界中の国・地域で、今後の政治の方向性を大きく左右する「選挙イヤー」であることが、各所で話題になっている。7月に入り、中盤の折り返し地点を通過して、いよいよ後半戦へと突入した。世界情勢に最も大きな影響を及ぼすとみられている米国大統領選挙の本選を11月に控え、米国内での政策論争も徐々にヒートアップしている。
欧州では6月6日から9日にかけ、EU(欧州連合)加盟国において、欧州議会に送り込む議員の選挙が実施された。選挙結果は事前の予想通り、中道右派が最多議席を獲得したことに加え、右派ポピュリズム政党の躍進により、右寄りの欧州議会が誕生した(24年3月26日配信『エネルギー業界は今年「事業撤退・縮小」のラストチャンスに!「もしトラ」も?欧米で重大選挙相次ぐ』)。
この選挙結果を受け、エマニュエル・マクロン仏大統領は国民の信を問うべく、仏国民議会(下院)を解散するという賭けに出た。しかし、6月30日の第1回投票で右派政党が首位に立ったものの、7月7日の決選投票では左派連合が躍進するという、どんでん返しが起きた。これによりフランスでは、EU議会と国民議会の間において、ねじれ現象が起こる可能性もある。
こうした欧州各国でのナショナリズムの高揚と、その反動ともいえる一部の国での動向、さらには気候変動対策に積極的であった緑の党やリベラル系政党の後退などは、今後のEU議会での対策目標に関する議論の行方を不透明にするであろう。中道の主流派政党が勢力を維持しているため、グリーンディールを撤廃するまでには至らないだろうが、ネットゼロ政策に向けた一般家庭へのコスト負担増を、EU加盟各国政府が打ち出すことをためらう可能性は高い。
こうした欧州大陸側の政治的動乱を横目に、7月4日に英国でも総選挙が実施された。結果は労働党が大勝利を収め、14年ぶりに与野党間での政権交代が実現した。