法務省の特別機関である検察庁。司法試験に合格した検事の方がキャリア官僚の事務官よりも上位で、法務省事務次官よりも検事総長の方が格上だ。退官後は弁護士になるケースが多く、上場企業の社外取締役に就いているOB・OGは全85人だった。特集『役所&日銀出身の社外取締役「報酬」ランキング』(全16回)の#13は、検事出身者のランキングを公開する。役員報酬額で1000万円を超えたのが32人。1位は3250万円だった。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
検事出身の社外取は85人!
うち98%が“ヤメ検弁護士”
司法試験に合格しなければなれない弁護士・裁判官・検察官は、文系エリートの頂点に君臨している。
ちなみに検察庁は法務省の特別機関になっているが、検事の方がキャリア官僚の事務官よりも上位。そして、法務省の事務次官よりも、検察トップの検事総長の方が格上となっている。
その検事総長に今年7月就任したのは畝本直美氏である。戦後33代目にして初の女性検事総長が誕生した。就任会見で畝本氏は「検察が国民の信頼という基盤に支えられていることを心に刻み、適正な検察権の行使に努めたい」と強調している。
近年、検事が取調室で被疑者に暴言を浴びせたり、捜査の筋書きに沿うように供述を誘導したりする問題が頻発している。畝本氏のコメントは、国民の信頼を失いかけている検察の厳しい現状を踏まえたものだ――。
今回は検察庁の検事OB・OGを取り上げる。社外取締役に就いている人物は85人もいた。他の中央省庁出身の社外取と人数を比較すると、“官庁の中の官庁”と呼ばれる財務省(101人)には及ばなかったが、国内の産業振興をつかさどる経済産業省(75人)より多かった。
これほど検事出身の社外取の人数が多くなったのは、いわゆる“ヤメ検弁護士”が企業の用心棒として頼りにされている表れである。検事を辞めた後に、弁護士として活躍している人物は85人中84人に上った。
唯一、弁護士登録が確認できなかった社外取は、元東京高等検察庁検事長の黒川弘務氏(67)だ。安倍晋三政権に近いとされた人物で、2020年に政府が閣議決定した検察官の定年延長は、黒川氏を検事総長に就かせるためのものという批判が上がった。
検察は、政権幹部を含む政治家の犯罪も捜査する。このため政治から一定の距離を保つことが重要になるが、黒川氏を巡る当時の政府の対応は、その前提を崩しかねないものだった。
さて、ダイヤモンド編集部は、検事OB・OGの社外取が受け取っている総報酬額を独自に試算した。役員報酬額で1000万円以上が32人いて、首位となった元女性検事の金額は3250万円に達した。
それでは次ページで、詳細を見ていこう。ランキングの中で、再就職先の「社名」や「兼務社数」「推計報酬額の合計」といった項目を見ていけば、社外取としての働きぶりが待遇に見合うものかどうかがチェック可能だ。問題となった黒川氏の報酬額も確認できる。
また、検事総長や大阪高検検事長、神戸地方検察庁検事正などの「役人時代の主なポスト」は報酬額と強い関係があり、必見の内容だ。