狂乱バブル ホテル大戦争#21Photo:PIXTA

国は2025年度末までに、自治体の20の業務をつかさどるITシステムの標準化を進めている。ダイヤモンド編集部の情報公開請求で、それらが大きく遅延している内幕が明らかになった。どの自治体がどのくらい遅れているのか、エリア別のランキングをお届けする。特集『DX180社図鑑』(全31回)の#21は、その北海道編だ。町や村のみならず、札幌近郊の大型の市でも、20システム全ての予算要求ができていない自治体が多数出ている。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

人口が多い大規模自治体でも
全ての対象システムの予算要求ができていない

 全国の約1700の自治体がDX(デジタルトランスフォーメーション)がらみで異様な事態に陥っている。いわゆる「自治体システム標準化」が極端に遅れているのだ。2025年度末までの予定で自治体業務をつかさどるITシステムの標準化と、ガバメントクラウド(ガバクラ)への移行を目指すものである。

 全国の市区町村で現在バラバラのITシステムを標準化し、さらにこれをクラウド化することで効率化を図るという方針の下、まずは戸籍や税関連など基幹となる20の業務システムを標準化。その後、政府指定のガバクラに乗り換えるというもの。デジタル庁が旗を振る中、約1700の市区町村が一斉に動く、いまだかつてない一大プロジェクトである。

 26年3月の移行を目指し、現在佳境にさしかかっている標準化作業だが、ベンダーや自治体関係者に取材を重ねると、のっぴきならない状況が見えてきた。「ここへきて大手ベンダーが次々と担当システムの移行困難を宣言している。全自治体の半数以上が移行困難になってもおかしくないのでは」と、デジタル広域推進機構代表理事で埼玉県戸田市デジタル戦略室長の大山水帆氏は言う。それどころか「25年度末までに全く無傷で無事にプロジェクトが終わる自治体はないのでは」と、複数の自治体のコンサルティング業務を行っているITコンサルタントの川口弘行氏は警鐘を鳴らす。

 一体何が起こっているのか。ダイヤモンド編集部は標準化プロセスの進捗状況について、プロジェクトの進捗を管理している総務省に情報公開請求を行った。そこから見えてきたのは、1741市区町村が持つ総数3万4820システムで進められる標準化作業が、証言を裏付けるかのように大幅に遅延している状況である。

 今回は、その情報公開請求の中身を、本特集の#11【独自】自治体ITシステムの標準化「スケジュール通りは3割だけ」の衝撃!情報公開請求で分かった大遅延に続き、地域別に詳細に紹介していこう。

 まずは北海道だ。179の市町村が存在するが、4月末時点で、2023年12月までに終了していなければならない工程が、対象の20システムの全てに対して終わっていない自治体が29もある。中には小規模の町村のみならず、札幌のベッドタウンとして有名な市も入っている。さっそく次ページから詳細を見ていこう。