2019年、原田さんが最初に手掛けたのは、2025年の働き方を描くアニメーションの制作だった。「当時はまだ『DXって何?』という声が多かったんです。イメージできないと、どう参加したらいいかも分からないですよね」(原田さん)
最初は原田さんらがシナリオを書いていたが、すぐに方針を転換。「どんな2025年にしたいですか」「今の悩みをどう変えたいですか」と各部門にヒアリングを重ね、一緒に未来を描いていった。
完成したアニメは、社員食堂の壁への投影や社内ポータルでの配信で刷り込みを図った。「少々オーバーな表現だったので『本当にこうなるの?』という反応もありましたが、そこに描かれた全社のフリーアドレス化は、予定より1年早く実現。夢物語が現実になって、私たち自身が一番驚いています」
紙の申請書類を340→70種に削減、アプリ化
アニメで心をつかんだ原田さんは、次の改革に着手した。社内に340種類あった紙の申請書類の整理だ。各部門と議論を重ねて70種類まで削減し、さらにノーコード開発ツールでアプリ化を進めた。
「紙のほうがフレキシブルで便利」という声もあったが、原田さんは「アプリ化で申請者、承認者、管理者の負担が減り、その時間を他の業務に使えるようになる。部門全体、会社全体が楽になる」と粘り強く説得。アニメで示した未来像への共感が、理解を後押しした。
こうして始まったアプリ開発は、各部門が自らアップデートできるまでに成長。前例踏襲だった承認ステップも大胆に見直し、2016年に月平均120万枚あった印刷枚数は3分の1にまで減少した。
人事を救った「AKANEちゃん」、本音が集まる「面倒リスト」
同じく一般職で、設計部門とデジタルファーストチームを兼務する浅野有夏里さんは、人事・総務・ITの問い合わせ対応チャットボット「AKANEちゃん」を運用している。年末調整の時期には約1000件の問い合わせが人事部に殺到していたが、「AKANEにも聞いてみて」と呼びかけた結果、7割がAKANEちゃんに問い合わせてくれるようになったという。
浅野さんのもう一つのヒットが、「面倒リスト」だ。当初は「idea post」というクールな名前で業務改善のアイデアを募集していたが、なかなか投稿が集まらない。