外貨獲得で半導体・鉄鋼レベルに! 50兆円をゲットだぜ!日本のゲーム#3Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages, Yoko Suzuki

任天堂・ソニーという家庭用ゲーム機大手プラットフォーマー2社。その次世代機の動向は2社の業績のみならず業界全体に影響が大きい。特集『50兆円をゲットだぜ!日本のゲーム』(全25回)の#3では、ゲーム業界歴20年以上のベテランアナリストである安田秀樹氏が、長期データを基に2社の次世代機の動向を大胆に読み解く。(東洋証券アナリスト 安田秀樹)

詳細が開示されないPS5 Proの異変から何が見えるか?
任天堂・ソニーの次世代機にこれから起きる大変革

 ソニーの最新家庭用ゲーム機であるPlayStation(PS)5 Pro」が、11月7日に全世界で発売された。最新の高性能ゲーム機であるPS5 Proは、ゲーマーから歓迎されるべきなのだが、ある「異変」が起こっている。詳細なスペックが事前に開示されず、本体に同梱された取扱説明書で初めて分かったのである。これまでのPS4のマイナーチェンジでは、細かな仕様が発売前に出ていたのに比べると、明らかな異変だ。

 PS5 Proについて事前にネットで公表されたのは、現行PS5との比較でGPUユニットの数が67%増加、GPUメモリ速度が28%向上、ゲームのレンダリング(データの処理または演算により画像や映像を表示させること)速度最大45%アップというあいまいな性能向上表現なのである。これはスマートフォンやタブレットではよく見られる表記であるが、これまでのPSの情報開示とは大きく異なる。

 今までPSは、かなり詳細なスペックを開示することでロイヤルティーの高いハイエンドなゲーマー層にアピールし、ユーザーの優越感を満たしてきたという経緯があるからだ。こうした状況を考えると極めて異例と言ってよい。

 そして公表された性能はゲーマーを満足させるようなものではなかった。PS5の価格は約7万円でPS5 Proは12万円と約1.5倍に上がったが、演算能力は10.8TFLOPS(コンピューターの処理能力の単位で、1秒間に浮動小数点演算を何回できるかという能力を指す)から16.7TFLOPSと価格上昇とほぼ同じ程度の向上でしかなかったのである(上表参照)。これは半導体のプロセスの進歩が鈍っており、現行品と同じプロセスを使っているためではないかと筆者はみている。

「異例」となったPS5 Proの販売から見えてくるものは何だろうか。そして、ソニーと任天堂の次世代機はどうなっていくのだろうか。さらに、よくいわれる「ハードの売れ行きはソフトのラインアップが左右する」という説が正しくないことを、データで徹底的に検証する。では、次世代のハードが勝つ要因は何なのか?次ページから、詳しく見ていこう。