いまの就活は男1000人vs. 女1000人の合コン

高橋 こう言ってはなんだけど、実際には、大企業が偏差値の低い大学の子を採用することはほとんどありません。でも大学の名前で選別していると言うと「不公平だ」と批判されるから、全員に門戸を開いているようなきれいごとを言うわけです。

 学生も、本当はわかっていてもそれを信じて、上から全部の会社を受けるから、最初に何十社も落ちるわけでしょ。そのために時間も食うわ、モチベーションも下がるわで、極度に不公平を避けたい社会が日本人をダメにしたようにも思いますよね。

河合 そう思います。

高橋 日本人の努力やクリエイティビティを否定している感じがします。

河合 反対の例はヨーロッパですよね。平等どころか、まだある意味での階級社会が残っています。国によって違いますが、たとえばスイスでは、小学校を卒業した段階で大学進学組と一般教育組とに分かれます。私の本にも書いていますが、スイスやドイツの場合は徒弟制度の名残があり、職業高校在学中からトレイニーとして企業で働きます。それがすばらしい人材養成の場となってますよ。

高橋 そうなんだね。

河合 ただ階級問題になってしまうので、イギリスは大学制度を変えました。オックスフォードやケンブリッジばかりではなくて、「ポリテクニックカレッジ」のような比較的入学が簡単な大学が増えたので、大学教育が大衆化されましたね。

高橋 私の講義でも言っていますが、いまの就活は、1000人の男の子と1000人の女の子が合コンをして、一人の結婚相手を決めようとしているようなものです。1000人同士がお互いを見て、「どの子が一番いいと思う?」と人気投票をしています。そうするとね、すべての男の子が、女の子の一番人気から順番に告白していくことになる。断られて、断られて、258人目でOKになった、465人目でOKになった、そんなことをやっています。

河合 すごくわかります。ダメでも最初からはあきらめない。大学に行くときはそう考えるわけですよね。ここはダメだから、ここって。なぜ就職活動ではそう考えないのか。

高橋 おまけにそれを、好き嫌いというよりも偏差値順で並べていく。

河合 おかしいですよね。偏差値が支配している国なんでしょうか。海外で偏差値と言っても「それはどういう意味?」と、聞いたこともない人がほとんどです。

高橋 自分の好き嫌いの感覚が信用できないのかもしれない。はっきり言って、503番目でOKだって言ってくれる人と結婚して、幸せな結婚になるはずがないよね。「俺は502人をあきらめて、おまえと結婚したんだ」という話がずっとつきまとうわけですから(笑)。

 先ほどの受験の話もそうですが、オープンにして、すべての人間に平等な機会を与えるという考え方が行き過ぎた結果は悲惨ですよ、1日目に5社しか回れないときはよかったですけど、インターネットでいくらでもエントリーできるようになってからは、社会全体が歪んできています。

 そういう経験を若いときにしてない40代は、なぜそういう考え方をする若者が出てくるのか、もう理解できないんだと思う。だからといって「おまえ、そういうもんじゃないんだよ」と言えるかというと、自分は人任せにしたから言えない。でも、どうしても違和感はある。じゃあ、どうすればいいんだろうと悩んでいます。