INCJ会長の志賀俊之氏Photo by Kazutoshi Sumitomo

1年で最も売れる「週刊ダイヤモンド」年末年始の恒例企画をオンラインで同時展開するスペシャル特集「総予測2020」。ダイヤモンド編集部が総力を挙げて、多くの識者や経営者に取材を敢行。「2020年の羅針盤」となる特集をお届けする。今回は、日産のCOOも務めたINCJの志賀俊之会長に、2020年の産業総論を語ってもらった。

“超”定石の時代に教科書通りの
経営は通用しない

──2020年の日本企業は難局に立たされています。「地政学リスクの増大」と「テクノロジーの急激なチェンジ」に見舞われたことで、企業が投資決断をちゅうちょする“フリーズ”状態に陥っているような気がしてなりません。

 その通りですね。40年以上もビジネスの世界に身を置いてきましたが、今ほど不確実性が高まったことはありません。まさしく混迷の時代です。

 従来ならば、資源価格や新興国経済といったマクロ指標を予測すれば、景気のサイクルを読むことができました。危機を察知するのが難しかったリーマンショックの直前ですら、コモディティの相場が上がり、株価も上がり、市場が過熱しているな、何かおかしいなという違和感があったものです。

 しかし、今は違います。米中経済摩擦の一時休戦、トランプ米大統領の再選の有無、ブレグジットの欧州経済へのインパクト、中国・香港・台湾情勢──。とりわけ地政学リスクの増大は深刻です。