
山崎 元
第117回
一連のトヨタ車の不具合の問題で豊田章男社長が初登場した記者会見は、残念ながら不評だった。練習の必要性を指摘したり、想定問答の答えにだめ出しをしたりするような真の「忠臣」が周囲にいないようにお見受けした。

第115回
私事で恐縮ながら今年の4月から、ある私立大学で学部生を相手に授業をすることになった。しかし、学生の予備知識と理解力をどのくらいに想定したらいいのか、授業計画を考えるとなるとなかなか悩ましい。一つは、学生の予備知識と理解力をどのくらいに想定したらいいのか、ということだ。たとえば「運用で市場平均に勝つのはなかなか難しいことだ」といった話について、ただちに「なるほど」と理解しなくても、「案外そういうものだろう」というくらいの想像力が働かないと、アクティブ運用だの「α」だのについて説明しても、何が話題なのかピンとこないに違いない。

第116回
バーナンキFRB議長が、批判がくすぶる中で再任された。彼への最大の批判材料は、2006年の就任後、サブプライム問題から金融危機に至る資産価格のバブルとその崩壊を防ぐことが出来なかったことにある。この批判は妥当なのだろうか。

第114回
最近、インデックス投資の優秀性を理解する投資家が増えてきたことは喜ばしい。また、まだまだ引き下げの余地があるが、公募の投資信託でも、ETFでも、信託報酬の低い商品が登場しつつあることもいい傾向だ。

第115回
オバマ政権の金融規制強化案が、世界の株価の下落要因になった。一部にはこれを「オバマ・ショック」と呼ぶ向きもあるようだ。では、今回の規制案はそれ自体として正しいのだろうか。その実現性と合わせて考察してみた。

第113回
菅直人財務大臣が就任時の記者会見で為替レートの水準について具体的に言及し、物議を醸した。一般に、政策の責任者の立場にある人物は、為替レートや株価などの相場の水準に影響を与える発言を慎むべきだとされている。菅大臣が仮に為替レートに影響を与えたかったとしても、異なる言い方が適切だった。しかし、経済政策の当事者が相場水準に言及することがすべていけないわけではないだろう。

第114回
会社更生法申請と上場廃止の可能性が盛んに報道されるようになってから、JALの株価は急落したが、その取引はむしろ活況を呈した。沈み行くJAL株を眺めつつ、この投機ゲームが示唆することについて考えた。

第112回
今年のマネー運用で最も重要なポイントは米国がいつ金融緩和政策の「出口」への動きを見せるかだ。日本株を中心に考えるとしても、最重要ポイントはここだ。米国のガイトナー財務長官は、12月23日のインタビューで雇用の回復は春以降となる公算が大きいとの認識を示している。こうした状況で今年のマネー運用はどう考えたらいいだろうか。

第113回
藤井氏の辞任を受けて財務大臣を兼務することになった菅直人副総理だが、率直に言って、政権発足後の働きぶりは期待を下回るものだった。今度こそ「官僚に最も嫌われている政治家」という称号に恥じない活躍を期待したい。

第111回
「コア・サテライト」と「LDI」。年金運用関係者以外ではお聞きになったことがない方が多い言葉かもしれない。個人でFPなどに相談する場合、相手が余計なものを勧めていないかどうかに注意を払うべきだ。

第112回
今年の春闘を「最後の春闘」と呼んでみたい。現実的には来春も労働組合と経営者の交渉は行われ、メディアは「春闘」という言葉でそれを報じるだろう。しかし、過去少なくとも十数年間にわたって春闘はその存在感を低下させてきた。

第110回
投資家は経験によって学習することが「どの程度」可能なのだろうか。どうやら投資家は経験から学習して行動を改善することは難しいようだ。なぜなら、現実の「自分の」損得は、単なる一つのケースだと理解するにはあまりに強烈な経験となりうる。客観的に考えることは難しいのである。

第109回
筆者はファイナンシャル・プランナー向けに講演をすることが時々ある。この際必ず質問されるのが「ドルコスト平均法」だ。筆者が言いたいのは、これを投資の方法として「有利な方法だと思うな」ということに尽きる。

第108回
確定拠出年金の現状をひと言でいうと、徐々に拡がっているけれども、盛り上がりを欠くという感じではないか。精彩を欠く最大の理由は、近年の運用環境が悪かったことだ。確定拠出年金加入者の多くが、儲けよりも損を抱えていることだろう。制度にしても商品にしても、大きく普及するのは市場が好調なときだが、次のチャンスをいいかたちで迎えるためには、不振のときにこそ欠点を解決して体制を整備しておく必要がある。

第111回
まだ全貌を完全に現し且つ安定したわけではないが、小沢氏の権力掌握の仕組みは極めて強力で緻密に設計されている。その権力構造が完成した暁には、与野党を問わず彼の政敵は彼と戦うことは難しくなる。

第107回
理論的には随時見直すべき運用計画だが、現実はそうなっていない。この問題を痛切に感じるのは大きな年金積立金の運用である。

第110回
民主党政権が来年度予算に於ける新発国債の上限に「44兆円」の目標を設けるか否かで迷走している。毎度のことながら閣僚の発言がばらばらだが、この件に関しては、大筋として認識が正しいのは亀井大臣だろう。

第106回
日頃当たり前だと思っていることでも、データに当たると当たり前でない場合がある。先日、少々心配になって、アクティブファンドの運用成績について調べてみた。

第109回
消費者庁は改正特定商品取引法の運用指針で「訪問販売お断り」といったシールを玄関に貼っても意思表示として無効だと判断することに決めたようだ。明確な意思表示なのに、なぜ不十分なのか。筆者には納得がいかない。

第105回
運用者にとって、1000億円運用するのも1100億円運用するのも手間はほとんど同じだ。率直にいって、アクティブ・ファンドでも同じだ。現在、ノーロード(販売手数料ゼロ)の投資信託はあるが、信託報酬(運用・管理の手数料)がゼロの投信はない。しかし、仮に、信託報酬もフリーにして、数兆円の運用資産と数百万人の顧客が集まったとしたらどうか。信託報酬ゼロは、そう非現実的な仮定でもない。本当に、運用ビジネスに「フリー」の余地はないのだろうか。
