北朝鮮は制裁解除のために
「包括的な廃棄」で動くしかない

 しかし米国が交渉再開を望んだとしても、交渉再開のためには合意の見通しが必要となり、その点では北朝鮮がカギを握る。

 金正恩委員長はまだ若く、おそらく今後、長く北朝鮮を支配し続けたいと考えるとすれば、何としてでも迅速に経済再建に取り掛かりたいと思うだろう。

 だが、現在の安保理制裁の解除なくして、それはできない。

 ハノイ会談の結果から考えれば、北朝鮮が制裁の全面解除を求めるのなら、すべての核施設を明確にして、これを包括的に廃棄するという戦略的判断をするしかないだろう。

 ただ北朝鮮が直ちにすべての核の廃棄を行うべく具体的に動くことはなかなか想定しにくい。

 したがって非核化に向けて前進を図るとすれば、昨年のシンガポール合意に従い完全な核廃棄の目的は維持しつつ、当面は米朝の信頼関係を醸成することが重要だ。

 北朝鮮は、核の廃棄などを段階的に進め、米国はこれに合わせ制裁も段階的に緩和していくという基本的枠組みの中で、合意の中身を作る交渉とならざるを得ないのだろう。

 つまり、北朝鮮が寧辺の核施設のうち廃棄対象にする施設を拡大する一方、当初は経済制裁を緩和する内容は限定され、核廃棄の拡大に合わせて制裁も緩和されるということになる。

 ただこのような交渉は、結果的には、北朝鮮の最終的な核廃棄に向けてのロードマップ作りということになる。北朝鮮がこうした実務的交渉に応じるかどうかだ。

もくろみがはずれた文大統領
日米との連携重視に戻る必要

 北朝鮮が最終的な核廃棄を念頭に置いた形で、米国との再交渉にのぞむかどうかについては、中国や韓国、日本といった周辺国がどう行動するのかが大きな意味を持つ。

「南北融和」を進め、政権浮揚につなげたい韓国文在寅政権にとって、ハノイ会談は残念な結果となった。

 もし米朝首脳会談で非核化に向けて合意ができれば、南北経済協力は安保理の経済制裁の例外とされる可能性はあった。

 文大統領は、懸案の開城(ケソン)工業団地、金剛山観光プロジェクト、南北鉄道の連結といった南北協力を再開する見通しを持っていただろうし、金正恩委員長のソウル訪問を3月にも実現させるという目算は狂った。