「分かりやすい」物流系や住居系へ投資拡大
オフィス系銘柄に投資妙味がある理由

 今回の下落は、前述の通り短期間で起きたことに加え、株式市場と比較しても下落率が大きくなっている点にも特徴がある。例えば19年末と20年5月末の下落率を比較すると、日経平均株価の8%弱に対し、東証REIT指数は20%超となっている。景気後退が賃貸収益にマイナスとなる点はあるが、物販などと比較すれば影響は少ない。J-REITでは、5月末時点で業績予想を未定とする銘柄はわずか1銘柄だけである点も加味すれば、J-REIT価格の下落率は際立っている。

 この要因として、19年にJ-REIT価格が「上昇し過ぎた」という点が挙げられる。東証REIT指数は日本銀行の相次ぐ金融緩和策によって堅調に推移してきたが、マイナス金利政策導入後の16年1月末から18年末まではおおむね1600ポイントから1800ポイントで推移していた。

 東証REIT指数は、19年7月にリーマンショック後としては初めて2000ポイントを超えた。19年末の東証REIT指数が2145ポイントであったため、5月末に1700ポイントまで回復しても下落率が株式市場と比較して高くなったと考えられる。もし19年末が1800ポイント程度で、5月末が1700ポイントであれば、コロナ禍によるJ-RIET価格の下落率は株式市場と同様のレベルだった。つまり東証REIT指数が1800ポイント以上の価格帯になったため、下落率が大きくなったといえるのだ。

 さらにJ-REIT価格の下落率が大きくなった要因として、収益の先行きに不透明感がある銘柄に対して価格の戻りが遅くなっている点が挙げられる。物流系や住居系銘柄は、昨年末の価格を上回っている。つまり投資家は、賃貸収益の安定性が分かりやすいという視点でJ-REITへの投資を拡大している状態だ。しかし、景気悪化に伴い、オフィス賃貸市場が悪化する懸念が生じている。オフィス系銘柄やオフィスを組み入れた銘柄は時価総額が大きい銘柄も多いため、東証REIT指数への影響が強くなっているのだ。

 このような価格下落要因は、個人投資家がこれからJ-REIT投資を行う上でも参考になりそうだ。まず市場全体の価格の先行きを、強気に見ることができるという点が挙げられる。

 前述の通り、19年にJ-REIT価格はそれまでとは異なる価格帯に上昇した。その大きな要因としては、米国の長期金利の低下が考えられる。米国の10年国債利回りが低下基調に転じたことで、これまでJ-REIT市場で存在感の薄かった生損保の買越額が急増した。生損保の買越額は、19年に上位3位までを占めているだけでなく、今回の急落局面でさえ売り越しとなっていない。つまり19年の価格上昇をけん引した生損保など「利回り狩り」の投資家の投資需要は、高いことがうかがえるのだ。米国債利回りが19年をさらに下回る状態が続いていることを考慮すれば、J-REIT価格の上昇余地は大きいのではないだろうか。

 さらに価格回復をけん引している投資家が、利回りの確保を目的としているという点も投資のヒントになる。例えばオフィス系銘柄は減配となる可能性が高くなっているが、すでに利回りが低くなっている物流系や住居系銘柄は価格上昇余地も少ない。例えば10%程度の減配となっても、利回りが物流系や住居系より高いオフィス系銘柄が大半となっている点を考慮すれば、利回り面でも価格上昇余地という面でも投資妙味がありそうだ。

 また総合型や複合型の銘柄も割安感が残っている状態だ。多用途に投資しているため、投資家からは分かりにくいというデメリットが強い状態になっている銘柄が多く、投資家に人気のある物流施設や住居が占める割合が高い銘柄も割安感が残っている。

 前述の投資ヒントを基に価格動向から「割安REITランキング」を作成した。該当銘柄が保有する用途ごとのポートフォリオ比率に対して、価格が下落し過ぎている銘柄の順位を示したものになっている。