ロケの仕方も変わるでしょうね。車座でロケ弁当を食べるとか、クランクアップの打ち上げはもちろんなし。また、これまではロケバス1台にぎゅうぎゅう詰めにして撮影現場に行っていたのを、車を増やしたり時差にしたりで現場に行く。そもそも、現場に全員行かなくても、タイムキーパーさんなど離れていてもできる仕事の人は現場の映像を見ながらリモートで対応するとかになる。

 もっと言うと「そもそもロケをせず、スタジオで撮影してバックをCGで処理する」とか「役者が自宅にグリーンバックを置いて、カメラの前で演技したものを、CGに取り込み360度角度を動かして合成して組み上げる」なども技術的には可能になる。アニメーションで作るとか、役者はモーションキャプチャーで演技してCGでアバター化するとかの方法もある。濃厚接触シーンだけをその方法で作るという手もあります。スタントマン的な演じ方ですね。僕はデビュー作がSFX作品(日米合作の「クライシス2050」)で、ゴジラやウルトラマンにも出演していることもあって、こういうやり方で撮影することに対してそこまで違和感はないですね。

別所哲也べっしょ・てつや/1990年、日米合作映画「クライシス2050」で米ハリウッドデビュー。その後、映画、ドラマ、舞台、ラジオ等で幅広く活躍中。「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」などの舞台に出演。99年より、日本発の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」を主催し、文化庁長官表彰受賞。観光庁「VISIT JAPAN 大使」、映画倫理委員会委員、外務省「ジャパン・ハウス」有識者諮問会議メンバーに就任。内閣府「世界で活躍し『日本』を発信する日本人」の一人に選出。第1回岩谷時子賞奨励賞受賞。第63回横浜文化賞受賞。 Photo by Jun.Takai/Photocompany

――映画館の営業はどうなるのでしょうか?

 他のサービス産業と同じですが、感染対策をやりながらリアルイベントの世界観をどう担保するか、ということが課題になります。つまり、劇場で密をつくらないという条件を満たしリアルの価値を創出しながら、原価と収益性のバランスをどう取るべきかの掛け算になります。製作および配給のコストが上がっている中、価格設定を変えるべきかという議論もありますね。そもそも映画館は製作原価が3億円の作品でも10億円の作品でも統一の1900円の値段で見られる。いろいろな経緯があってこうなっているわけですけど、例えば舞台に関しては下北沢の小劇場と、帝国劇場のオペラの鑑賞チケットに価格差があります。顧客層と狙うマーケットが異なるのであれば、舞台のように値段に差をつけても本来はいいはずなのです。

――映画をネットフリックスで配信することがコロナ禍で一気に普及しています。近年市場として伸びていた劇場上映も、この状況では急速に冷え込んでしまいますね。

 僕はステージアクター出身なので、生身と濃密の魅力はむちゃくちゃよく分かっています。でも、世界の状況を見るとやっぱり観客が警戒して映画館に行かなくなり、エンタメや映画を求めてネットフリックスやYouTubeなど違った場に民族大移動するのはやむを得ないこと。業界側が変わっていかなければならない。

 劇場で映画をリアルで見るというアトラクション体験は残りますが、江戸時代に庶民がハレのイベントとして伊勢参りに行くなどのような希少性が高い、ちょっとリスクが伴うコト消費となるのではないかと考えています。もう少しコロナ感染の実態が解明されて映画館はリスクが低い等のことが科学的に証明されたら、そこまでいかないで済むかもしれないですけど。

 僕は「映画館お風呂理論」というのを唱えているんですけど(笑)、例えばこれまで家庭にお風呂がなかった時代は、みんな毎日銭湯に行っていましたよね。家庭に内風呂ができて昔ながらの銭湯は減ったかもしれないけど、温泉宿やスーパー銭湯など別のサービスに進化することで生き残っていったわけです。映画は20世紀に花開いた産業ですが、そこにあぐらをかかずに時代の風を感じて変わっていけばいいんです。

――世界の有名映画祭もコロナ禍で軒並みオンライン開催となりました。

 カンヌ国際映画祭も、トライベッカ映画祭(ロバート・デ・ニーロ氏らが創設した米ニューヨークのインディペンデント映画祭)もオンライン開催が決まりましたね。僕が運営しているショートショートフィルムフェスティバルも、今秋にオンラインの開催に移します。実はこれは昨年から模索してきたことなんですが、当時はオンライン映画祭で扱われる作品は他の映画祭に受け入れてもらえないとか、配給会社が買わないとか、20世紀の既成概念でシネマとしての販路を断たれるということが起きていました。それがあるが故にみんな足がすくみ、オンラインでの権利処理や音楽の著作権処理が進まないという状況だった。

 ところが、こういう状況になって、どうすればいいかをみんなが一斉に考えざるを得なくなって、一気に物事が進んでいる。いいことですよね。来年のアカデミー賞のオンライン開催ですか?どうなるでしょうね。コロナを理由に今年だけオンラインということでやってみたらこっちがいいじゃん、となる可能性はあるのではないかと、僕は個人的には思います。製作者・クリエーター側のマインドも大きく変化していくでしょう。