「天才的な脳」をつくる仕組みとは?
加藤:双雲先生は左利きかつADHDをお持ちとのことですが、ADHDの人は2つの物事をやったほうが自己認知が上がりやすくて良いんですよ。なぜなら対比ができるから。書で表現する自分と、アートで表現する自分を見比べることによって、自分の立ち位置が決まりやすいんだと思います。
武田:左利きでADHDの人は、2つのことをやるのがオススメということですか?
加藤:というか、やらざるを得ないと思いますね。その欲求がありますから。やらないとバランスが取れないし、やったほうが天才的な脳の仕組みを作れる。双雲先生も自分の欲求に従っていった結果、「書とアート」という選択をしたんだと思います。
武田:書道だけだと飽きてしまったんだと思います(笑)。そんなときに娘の色鉛筆を借りて描いたら、すごい反響があって。僕の絵は書をアート化しているんですけど、絵というより小さい頃の落書き感覚ですね。だから作品によって全然違う。いろんな人格が出過ぎる、という感じです。
加藤:それぞれの作品の原点はどこからくるんですか? 見たもの経験したものなどからくるのか、双雲先生の頭の中からくるのか?
武田:これが面白くて。書道はどこか美人画のようなもので、ある程度美のパターンが決まっているから、イメージする前にそのパターン通りに勝手に体が動いてしまっているんです。だけどアート作品のほうはイメージを持てないんですよ。パターンが全くないので。だからアートのほうは常に、自分にサプライズをしている感じで楽しいんですよね。
子どもって何であんなに楽しそうに遊んでいるかというと、それをやったら何が起こるか分からないから、そこにワクワクしているんだと思うんです。たとえば絵なら、これとこれ混ぜたらどうなるんだろう? うわっ、汚い色だな! とか(笑)。逆に「あれ、意外と美しい!」ということもあるし。常に自分の常識じゃないところにいく感じが、アート作品制作の楽しさなんです。僕としてはそういう感覚で描いているんですけど、なぜかそれを「天才だ」と言ってもらえるんです(笑)。
左利きや発達障害の人は
「アートの才能」が伸びやすい
加藤:自分の作品を後で自己評価することはあるんですか?
武田:いつも僕は感動するんですけど、これが人にはどう受け取られるか分からないから自信はないんです。でも絶対いいと思うだけどな、とは思いますね。もちろん書道の先生もやっていたので、自分の感覚評価だけじゃなくて、左脳的な1ミリ単位のチェックもしていますよ。絶対音感みたいな感じで、違和感に対するチューニングは自然とやっていると思いますね。
加藤:棟方志方の作品からも、同じような印象を受けます。右脳と左脳の両方で見ながら作品作りをしている、というような。
武田:ピカソなどは、絶対音感みたいな感じで、絶対バランス感とか絶対色彩感覚とかを身に着けていて。そのうえでぶっ壊す作業をおこなっていたので面白かったんだと思います。
加藤:ピカソは左利きではなかったんですけど、ディスレクシア(難読症)という発達障害があって、字が上手く読めなかったそうです。だから絵が言葉だったのかな、と思ったんですけど。
武田:左利きとか発達障害の人は、アートの才能が伸びやすいんですか?
加藤:それはあると思います。やはり人と違う視点や感覚を持っていますので。僕の感覚を率直に言わせてもらいますと、双雲先生の作品は双雲先生のキャラクターそのものが出ている気がします。
これからはマイノリティに有利な時代がくる
武田:たしかに「書は人なり」とか、アートにはその人の生き様が出る、とか言われますもんね。不思議ですよね、全部出てしまう。今って大量生産の時代が終わって、デザインの時代に入ったけどそれも極めきって、それぞれがコモディティ化してみんな飽きちゃって。そこで令和に入ったあたりからクリエイティブな時代になりましたけど、クリエイティビティってゼロからイチを産むものなんですよね。創造ですから。要するに「変なことをする」ということでもあると思うんです。そうなるとマジョリティじゃない人のほうが強いんじゃないかと。
加藤:これまでは「何でそんなことするの?」と白い目で見られていたことが、これからはクリエイティビティという価値になる。
武田:そうそう、そういう人たちのほうがクリエイティブなことが自然にできてしまう。だから左利きや発達障害のようなマイノリティには、すごく有利な時代がくると思うんです。実際、先生もこうやって書かれた著書が大ヒットしているわけですし。
加藤:すごい左利きの時代が来たということかな(笑)。
1975年熊本生まれ。東京理科大学卒業後、NTTに就職。約3年後に書道家として独立。NHK大河ドラマ「天地人」や世界遺産「平泉」など、数々の題字を手掛ける。講演活動やメディア出演のオファーも多数。ベストセラーの「ポジティブの教科書」のほか、著書は60冊を超える。2013年度文化庁から文化交流使に任命され、ベトナム・インドネシアにて、書道ワークショップを開催、2017年にはワルシャワ大学にて講演など、世界各国で活動する。近年、現代アーティストとして創作活動を開始し、2015年カリフォルニアにて、アメリカ初個展、2019年アートチューリッヒ、2021年ボルタ・バーゼルに出展。2020~21年には、ドイツ・スイス・三越伊勢丹各店舗・大丸松坂屋各店舗などにて個展を開催し、盛況を博す。
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左利きの脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長
株式会社脳の学校代表。昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニングの提唱者
14歳のときに「脳を鍛える方法」を求めて医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700ヵ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD(注意欠陥多動性障害)、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。帰国後は、独自開発した加藤式MRI脳画像診断法を用いて、子どもから超高齢者まで1万人以上を診断、治療を行う。「脳番地」「脳習慣」「脳貯金」など多数の造語を生み出す。InterFM 897「脳活性ラジオ Dr.加藤 脳の学校」のパーソナリティーを務め、著書には、『脳の強化書』(あさ出版)、『部屋も頭もスッキリする!片づけ脳』(自由国民社)、『脳とココロのしくみ入門』(朝日新聞出版)、『ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”』(大和出版)、『大人の発達障害』(白秋社)など多数。
・加藤プラチナクリニック公式サイト https://www.nobanchi.com
・脳の学校公式サイト https://www.nonogakko.com
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